猫とホームレスが織りなす何とも柔和な共生 捨て猫でも野良猫でも彼らには生きがいだ

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4万~5万円とは大きい額だ。氏は空き缶集めで稼いでいるそうだが、いくら頑張っても月に7万~8万円稼げればいいほうだ。つまり稼いだおカネの、大部分を猫につぎ込んでいるわけだ。

しかし口では「猫のせいで大変だ」と言っているけど、口元はゆるんでいる。無愛想なお爺さんだけど、本当に猫が好きなのだ。

お爺さんは、彼の小屋の隣に建てられた小屋を指差した。

「隣の小屋、すげえ立派だろ。でも住人は建ててすぐにガスで死んじゃった。立派に建てすぎて密閉しちゃって通気ができなかったのかもしれないけど……まあ多分自殺だろうな。病気だって言ってたからな。最初から死ぬつもりだったから、あえて死に場所として立派な建物建てたのかもしれない。人間、病気になるとダメなんだよ。死んだほうがずっと楽だ」

死んだほうが楽だが、死ぬわけにはいかない

俺も持病があるから、本当は死んだほうが楽なんだよ、とお爺さんは寂しそうに言った。

猫のためにエサを買ったり、拾ってきたりする人も少なくない(写真:筆者提供)

「猫は賢いから隠れて死ぬんだよ。誰にも気づかれないように、すっとな。でも人間はバカだから、病気になると電車に飛び込んだりするんだ。バカではた迷惑だけど……でも病気で苦しむより、電車でハネられたほうが楽なんだ。気持ちはわかる。でも俺は死ぬわけにいかないんだよな。なんたって12匹も猫がいるからな。これからも猫の介護をしていかなきゃならないんだ。死ねないよ。まあ猫は猫で俺がいなくなったらいなくなったで、シレッとよそでエサをもらって楽しく生活していくのかもしれないけどね」

そう言うと、お爺さんはえらく楽しそうに笑った。

猫を愛している野宿生活者は多い。自分は食べなくても、猫のためにエサを買ったり、拾ってきたりする人も少なくない。

まれにヒモでつないで飼っている人もいるが、多くは半野良状態で飼っている。昼間は適当にそこいらを歩き回り、エサの時と寝る時だけ帰ってくる。そういう野良猫のために河川敷に小屋を建てている人もいる。しっかりとした作りで、もちろん雨風もしのげるし、定期的にエサも置いてあげている。

現在ではそういう“半野良”な飼い方をする人は少なくなったが、昭和の頃はみんなそんな感じだった。むしろ家から出さずに飼っていると、「猫の自由を奪ってかわいそうだ」などと言われたものだった。

時代は変わり、最近では野良猫にたいして世間の目は厳しくなってきている。

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