ソフトバンク通信子会社は、上場できるのか 株式市場は財務懸念後退と役割明確化を好感

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ベイビュー・アセット・マネジメントのファンド・マネージャー、谷川崇人氏は株式上場について「ソフトバンクグループへの評価のノイズがなくなるという点ではポジティブだ」と指摘。「部門として通信が大きいと、どうしても通信のアナリストからの評価が多くなってしまうが、そこが切り離されれば、サム・オブ・ザ・パーツとして評価できるようになる」と語った。

株価反応は『孫さんプレミアム』

ただ、手放しで喜べるわけではない。利益の外部流出は長い目で見ればソフトバンクGの信用力に傷をつける可能性も否定できない。加えて、いま政府が検討している携帯電話市場改革がソフトバンクの利益を圧迫するリスクもある。ある総務省幹部は「携帯電話大手3社は儲けすぎだ。しっかりとした第4極を作りたい」と述べ、さらに料金低下を促していく姿勢を示した。

国内通信事業の2017年4─9月期業績は、売上高が前年比1.6%減の1兆5289億円、セグメント利益(営業利益)が同6.9%減の4339億円と減収減益となった。顧客基盤拡大に向けた先行投資が足を引っ張ったが、背景に競争環境の激化があることも見逃せない。規制が強化されれば、ソフトバンクからソフトバンクGへの上納金はさらに減る可能性がある。

親子上場によるガバナンス上の問題も不安材料だ。少数株主の意見に耳を傾ければ、それだけソフトバンクGの判断の自由度が狭まる。

関係者によると、ソフトバンクGは上場検討にあたって信用力の維持に細心の注意を払っている。フリーキャッシュフローの状況などを見極め、信用力に傷がつきかねないと判断した場合は、上場検討を取り止める可能性もあるという。

ベイビューの谷川氏は「カネ余りの状態がまだ続く中で、資金の逆回転が起これば、M&Aに対する評価も分かれていくかもしれないが、現時点でどういうきっかけでそれが起きるのかはまだ読めない。ただ今のところ成功している。(株価の反応は)『孫さんプレミアム』がついている」と話した。

(志田義寧 長田善行 サム・ナッセイ 編集:石田仁志)

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