GMバーラCEOが描くEV黒字化目標の賭け GMの「秘策」とは?

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確かに、世界の自動車販売全体に占めるEVの割合は、まだほんの僅かだ。他のメーカー同様、GMにとっても、独自のコスト削減や車両性能の改善だけでなく、需要増大が頼みの綱となっている。その牽引力となるのが、環境汚染対応と石油依存度の抑制を目指して中国政府が掲げたEV導入目標だ。

バッテリーと車両の設計や性能改善に加えて、GMは中国パートナーであるSAICと協力して、EV組立工場のコスト削減を進めている。複数の関係者によれば、両社は中国において、従来の自動車工場に比べてはるかに小規模で、よりシンプルかつ効率的なEV専用工場の建設を計画しているという。

バーラCEOの強気な主張

欧州における複数の赤字部門売却、不採算市場からの撤退、また2018年後半に投入が見込まれる収益性の高い化石燃料を使った次世代ピックアップトラック向け投資をバーラCEOが決定したことで、GMにはEV開発に投じる資金の余裕が生じている。

現在同社では1700人以上の技術者、デザイナー、研究者がバッテリーとEVの開発に取り組んでおり、その多くがミシガン州ウォレンのテクニカルセンターで働いている。2009年、米倒産法の適用申請した1週間後、GMはこの地に電池専門の研究センターを開設した。

業界アナリストによれば、同社のバッテリー・EVグループは世界最大級であり、これに匹敵するのは日本のトヨタ自動車<7203.T>とドイツのダイムラーAG<DAOGn.DE>だけだという。

近年、トヨタが特許を取得したバッテリー技術件数はGMを上回っているが、トヨタが力を入れているのは、GMの「ボルトEV」のような純粋に電池で動くEVではなく、ガソリンと電気のハイブリッド車「プリウス」シリーズ向けだ。

2010年以降、米国特許商標庁から入手可能な最新年度である2015年までに、GMではバッテリー技術に関する661件の米国特許を出願している。世界規模のライバルでこれを上回るのは、762件のトヨタだけだ。

バッテリーの取り組みに加えて、GMは次世代EV専用の新たな「プラグ&プレイ」車体構造を開発。関係者によれば、自由度が高くモジュラー方式となっているため、さまざまなサイズのバッテリーシステムに加え、燃料電池の搭載も可能になるという。

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