復活ルネサスが挑む「自動運転半導体」の戦い トヨタも認めた技術力で米国勢に対抗

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自動車の末端を制御するマイコンから頭脳部へと攻め上がるルネサスと、脳から車載半導体の市場全体ににらみを利かせるエヌビディア。今後、「完全自動運転」へと進化すれば、勢力図は激変する可能性もある。前出の杉山アナリストは、「ルネサスがエヌビディアに対抗するのは、AI関連のM&Aなどをしないかぎり厳しい」と見る。

ルネサスはマイコンメーカーで終わるのか、車載半導体を制するのか。戦いは本番を迎える。

ルネサス社長「量産車では絶対に負けない」

ルネサスの呉文精社長は車載半導体事業の重要性を強調した(撮影:今井康一)
社長就任から約1年半。ルネサスの呉文精(くれ・ぶんせい)社長は、自動運転時代に向けた車載半導体の戦略に手応えを感じ始めている。東洋経済の単独取材に答えた。

構造改革後の成長戦略を実行することを使命として2016年に社長に就いた。2017年6月に産業革新機構が株式の一部を売却した後、825円の売り出しから株価は1400円程度まで上昇した。高く評価してもらい、自立に向けた第一歩を踏み出せた。

自動運転分野ではマイコンで圧倒的な技術の強みがあり、価格競争にはならない。自動運転が広がれば、車自体の商品性がマイコンやSoCで決まるようになる。われわれの立ち位置も変わってきた。これまでは顧客が求めるスペックのチップを造る企業だったが、今は車メーカーに直接提案することも増えている。

最近話題のエヌビディアの製品は、高級車には載せられるだろうが、量産車に載せるにはそうとう消費電力を抑えないといけない。車の世界で勝つには、顧客と将来のロードマップを共有し、量産車から高級車種向けまで幅広い価格帯で製品展開する必要がある。半導体メーカーが儲かるところだけをやっても、車メーカーはラインナップをそろえられない。量産車では絶対に負けないようにやっていく。

今後も車載事業はルネサスにとって重要なエンジンだ。M&Aもタイミング次第だが、検討している。車載で開発した先端技術を他の事業でも活用し、さらなる拡大を目指す。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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