安倍政権は、財政推計の「粉飾」を始めるのか 茂木大臣が金利の前提を修正すると発言

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この結果、直接的な影響を受けるのが、一般会計の国債費(利払い費など)の見通しだ。長期金利が上がると国債の利払い費が増加する構造のためだ。

2017年7月公表の試算では、経済の拡大に伴い、長期金利は2018年度の0.1%から2019年度0.7%、2020年度1.4%と上昇を続け、2025年度には4.3%に達するという見通しになっていた。これにより、国債費は2018年度の22.5兆円から2025年には41.7兆円に膨張する見通しだった。

国債費の膨張は、借金に伴う収入や支出を除いたものであるプライマリーバランスには影響しない。だが、国債費膨張による新たな借金拡大により、公債等残高(対GDP比)の増大に直結する。

債務残高対GDP比を重視?

2017年の試算では、国債費は税収の増加を帳消しにするペースで膨張。国債費のGDPや一般会計歳出に占める比率は2021年度以降、「発散」(歯止めなく膨張)してしまい、事実上の財政危機に陥る姿が示されていた。また、GDPの拡大により漸減していく公債等残高(対GDP比)も、2028年度以降は増加に転じるという試算が民間シンクタンクから出ている。

茂木氏が語るように長期金利の想定を引き下げれば、公債等残高(対GDP比)はこれまでの試算より低減する可能性が高い。安倍政権は財政健全化について、「プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標を堅持し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す」という方針を示している。長期金利想定を修正するだけで、いとも簡単に後者を実現してしまう格好だ。

消費税の使途変更により、プライマリーバランスの見通しは前回試算より若干の悪化が避けられない。このため、公債等残高(対GDP比)の改善で試算結果悪化の印象を軽くしようという狙いだろう。安倍首相の悲願である憲法改正の実現に向け、国民の支持をつなぎ留めるためにも、教育無償化などで財政支出拡大の余地を残しておきたいという姿勢が背景にある。

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