「乳房と別れを告げた女性」が選んだ生き方 幸せを手に入れた矢先の「乳がん宣告」

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川崎 貴子(かわさき たかこ)/1972年生まれ。埼玉県出身。リントス代表取締役。1997年にジョヤンテを設立後、女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を展開。女性誌での執筆活動や講演多数。現在はninoya取締役、およびベランダ取締役として、共働き推奨の婚活サイト「キャリ婚」を立ち上げ、婚活結社「魔女のサバト」も主宰。「女性マネジメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。(撮影:尾形文繁)

川崎:スケジュールがいっぱいいっぱいで、手術前に入院して1日ぽっかり空いてる時間に「やっと眠れた」というくらい。それに、何日経ったら致命的になるかもわからない。なるべく早めがいいだろうと、漠然と素人考えであったので、先生から「全摘のほうが、再発率が低い」と提案されたらすぐ決めたという感じですね。

辻直子氏(以下、辻):私の患者さんにもパパッと決める方もいらっしゃるし、そうでない方もいらっしゃいます。病状的に「全摘」と言われると、もう悩む余地がないですよね。ただ、「全摘と温存、どちらでもいいよ」と言われると、選択肢がある分、悩まれる傾向にあります。また、再建するかどうか、再建するならどのような方法で行うかで悩む方も多いですね。

川崎:外科手術はやはりなるべく早いほうがいいんですか?

:乳がんは、最初のがん細胞が発生してから、検診でわかるようなしこりになるまでに10年ぐらいかかると言われています。したがって1、2カ月、急いでも変わらないというのが実情です。「手術枠がいっぱいなので、1カ月待ってください」と言われて皆さん不安に思われるんですけど、大勢には影響がない。ただ、がんが急に進行する時期もあるので、そういう場合は急いだほうがいいですね。

「乳がん」といっても症状はさまざま

川崎:じゃあ、私とがんはもう結構長い付き合いだったんですね。

:そうなんです。授乳中もすでにあったと思いますが、授乳には関係ありません。

川崎:転移というのは、なぜ起きるんですか?

:がんはどんどん増える細胞の塊なので、最初のうちは乳腺の中で増えるけれども、壁を越えて血管やリンパなどにがん細胞が食い込んでしまうと、あちこちに運ばれて定着してまた増える。これが転移です。全身を巡っても定着しなければ転移はありません。

川崎:私の場合、転移がなかったことが幸運でした。

:ただ、一定以上進行したがんは、転移がなくてももう全身を回っている「浸潤がん」という状態です。切って病理検査をすると浸潤がんかどうかわかるので、全身に対する薬の治療とかをすることが多いです。もちろん、全身回っていても転移せずに治ってしまう人もいる。

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