実体のないビットコインがなぜ価値を持つのか。
理由の1つとしてその希少性が指摘されることが多い。発行量はあらかじめ定められた速度で増加していき、上限が2140年に2100万ビットコインと設定されているため、金や銀と同様に有限であり、ビットコインを利用した支払いを行う需要に対して供給が限られていることが、価値を持つことの根拠の1つとされている。
名目の経済活動や経済取引量と通貨量の間に比例関係があるという貨幣数量説は、通貨の流通速度が変化してしまうので短期的には成り立っていないが、長期的には成り立っている。通貨量と物価や名目GDP(国内総生産)などの経済活動を表す経済指標との間には、緩やかながらも貨幣数量説の言うような比例的な関係があると考えられている。
世界経済が発展を続ける中で、ビットコインによる決済が拡大していけば、取引のために必要なビットコインは増加を続ける。貨幣数量説が成り立つのだから、供給量が限定されているビットコインの価格が上昇することになるはずだというのが、希少性からビットコイン価格が上昇を続けるという考え方の論拠だ。
ビットコインは生き残れるのか
しかし、ビットコインそのもの供給量は制御されていても、分裂騒ぎでわかるように類似の仮想通貨は次々と発行されている。ビットコインの分裂とは関係なく、新たに発行されている仮想通貨もたくさんあり、現時点では千数百種類の仮想通貨が取引されている。多数の仮想通貨が並行して取引に利用されるということは考え難く、現在あるもののほとんどはいずれ消滅してしまうだろう。しかし、将来複数の仮想通貨が生き残るとすれば、仮想通貨全体の供給量はビットコインの量だけでは決まらない。
現在のビットコインのシステムでは取引が確定するまでに、10分程度は必要だという取引速度の遅さが問題として指摘されている。現在は仮想通貨の中で圧倒的に大きなシェアを占めているものの、より進んだシステムを採用した仮想通貨が広く利用されるようになるという可能性もあり、ビットコインが最後まで生き残るという保証もない。
元々ビットコインの価値が過小評価されていたという可能性はあるものの、ビットコインが分裂するということでは株式の分割と同じで理論的には価格は下落こそすれ上昇しないはずなのに、これを材料に価格上昇が起こった。株式市場でも株式分割のうわさで株価が上昇するということはしばしば見られるが、分割後に株価は不安定となり、分割を材料とした株価上昇が一過性の騒ぎにすぎないこともしばしばだ。
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