クライスラーIPOはフィアットのはったり? フィアットCEOの目論見やいかに

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カルロス・ゴーン氏のようなCEOに

ISIグループのロンドン駐在アナリスト、ジョージ・ガリアーズ氏は「フィアットが身を引くことはあり得ない」と指摘。「マルキオーネ氏自身の信用やフィアットの株価にとって、(身を引いてしまえば)ダメージは取り消せないだろう」と語る。

グループ全体の上期売上高のうち、クライスラーが占める割合は半分以上。また、クライスラーがフィアットの損失をもカバーしている。クライスラーの持つキャッシュや事業規模は、マルキオーネ氏が描く成長戦略に不可欠だ。

フィアットとの関係が深いミラノの銀行関係者は「VEBAといった長期投資家を投機筋に置き換えたら、単にトラブルだけを欲するヘッジファンドで株式を抑えられてしまう危険がある」と述べた。

一部アナリストらは、マルキオーネ氏はUAW基金が保有する株式の一部もしくは全ての取得で合意し、クライスラーの上場を阻止する可能性がより高いとみている。

UBSの推計によると、競合他社の時価総額や2014年予想利益からみて、UAW基金が保有するクライスラー株式41.5%の価値は約56億ドル。同行のアナリストは、包括的に見ると49億ドル近くで落ち着くのではないかとの見通しを示す。

クライスラーの完全買収と経営統合を成し遂げることは、2015年に引退する意向を示しているマルキオーネ氏にとって最後の大事業になるかもしれない。

マルキオーネ氏と仕事をした経験がある関係者によると、同氏は「(仏自動車大手ルノーと日産自動車<7201.T>のCEOを兼務する)カルロス(・ゴーン氏)が成し遂げたように、自動車ビジネスを征服したCEOとして知られたいと考えている」という。

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