2017年の政局は「忖度」と「北」に揺れ動いた 主役たちの思いは悲喜こもごもの年の暮れ
列島各地の盛り場にジングルベルが鳴り響く年の暮れ。演目が猫の目のように変わった2017年の「永田町劇場」でそれぞれの場面を盛り上げた「主役」たちは、悲喜こもごもの表情で除夜の鐘を聞き、新年を迎える。
漁夫の利の選挙圧勝で「主役」の座を維持した安倍晋三首相は、ハワイの真珠湾訪問など年末ぎりぎりまで世界を駆けめぐった2016年とは違い、年末年始は都内のホテルなどで英気を養う予定だ。一方、衆院解散直前の希望の党結党時には「永田町の主役」としてもてはやされた小池百合子東京都知事は選挙惨敗で党代表も辞任し、国政を離れて年明け以降も都庁に引き籠る。対照的に小池氏の「排除」をバネに野党第1党に躍進した立憲民主党の枝野幸男代表は、「草の根民主主義」を旗印に肩で風を切って勢力拡大に取り組む。
内外情勢が揺れ動いた今年の流行語大賞には「忖度」、そして今年の漢字には「北」が選ばれた。いずれも今年の政治に絡むものだが、首相ら永田町の主役たちの反応にも複雑な思いが浮き彫りとなる。
10・22衆院選に圧勝し、再登板時からの国政選挙5連勝で"1強政権"の勢いを維持した首相だが、今年の政権運営を揺さぶり続けたのは「森友・加計学園問題」だった。いずれも学校建設での許認可に絡むものだが、森友学園では籠池泰典前理事長(詐欺容疑で逮捕)、加計学園では加計孝太郎理事長という中心人物が首相や昭恵夫人の「親しい友人」だったことで、政治的な疑惑として野党やマスコミの厳しい追及にさらされたからだ。首相の感情的な国会答弁も重なって、内閣支持率が急落するなどで「政権の危機」も囁かれる事態を招いた。
「もり・かけ疑惑」は未解明のまま越年
今年の流行語候補から大賞に選ばれたのは「インスタ映え」と「忖度」。前者は国民生活へのインターネットの浸透を象徴しているが、衆院選や都議選では一部のネット巧者達が票集めに活用する場面も目立った。後者は首相を悩ましたいわゆる「もり・かけ疑惑」を象徴する言葉で、政治の闇が絡んで国会やメディアの言語空間で飛び交い続けたことで受賞した。
「忖度」を辞書でひくと「他人の心を推し量ること」が真っ先に出てくる。日本社会ではごく日常的なことともみえるが、今春から永田町を騒がせ続けた「もり・かけ疑惑」の核心が、関係省庁の役人らによる首相への「忖度の有無」とされたことで早い時期から大賞の最有力候補に挙がっていた。
大幅値引きによる国有地売却という「森友疑惑」が浮上した2月には、首相は国会答弁で「私自身や妻、さらには私の事務所が少しでも関わっていたら総理大臣だけでなく議員も辞職する」と啖呵を切った。しかし、昭恵夫人と籠池夫妻の親密な関係が次々に写真や動画などで明らかとなり、国有地売却を主導した財務省当局の「交渉記録は残っていない」などのふてぶてしい国会答弁も加わって一大政治スキャンダルとなった。安倍政権のアキレス腱として未解明のままで年を越すため、まだまだ、「過去の言葉」とはなりそうもない。
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