阪急が新線建設にやる気を出した4つの理由 なにわ筋連絡線・伊丹空港連絡線…計画続々

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ただ、他の関西大手私鉄4社やJR西日本が1980年代後半から意欲的に新線建設を推進してきたのに対し、阪急は何も動かなかった。今年になってアピールし始めたのには、唐突な感は否めない。

たとえば、なにわ筋連絡線について、1989年に構想を公表した後は長年放置してきた。2004年に審議会答申が出された際には、構想の提案を見送っている。事実上、計画中止の扱いだった。

代わりに推進してきたのが西梅田・十三連絡線である。2004年の答申で事業性や費用対効果が高いと評価されたこともあり、国交省や大阪市などと2007年から検討を進めていた。橋下徹大阪市長時代には、地下鉄四つ橋線を南海経由で関西空港まで直通させる案も示された。ただ、現行の四つ橋線西梅田駅ホームが比較的浅い位置にあるため、阪神梅田駅とJR大阪駅の下を潜って北側に延長するのは困難だ。大規模なルート変更が必要なこともあり議論は進まなかった。

そこで阪急は方針転換して、同じ役割を持つ、なにわ筋連絡線構想を再提案した。なにわ筋線は巨額の事業費に見合った整備効果があるのか不安視されており、阪急の新線が乗り入れてくることで事業性を高める可能性があるなら、南海など他の関係者にとってありがたい話になる。

新大阪への延長にも難しさが

なにわ筋連絡線とセットで検討される新大阪連絡線構想も難しい状況にある。

新大阪駅前で1960年代から準備されていた「阪急新大阪駅」の予定地に、2012年以降、新大阪駅北口と新大阪阪急ビル、そして東海道新幹線27番線ホームと引上線が設置された。残りは阪急関連会社の駐車場として使用している(筆者撮影)

新大阪駅への延長構想は60年前から存在する。当時は十三―新大阪―淡路(神崎川)間で京都線急行を走らせる予定だった。開業目標は大阪万博のあった1970年とされたが、土地を確保しただけで凍結された。新大阪駅周辺の開発が伸び悩んで需要が期待できなかったからだ。

京都線と接続する十三駅と淡路駅の立体交差化のメドが立たないのも要因だ。淡路駅の立体交差化は1994年に都市計画決定されたが、新線の乗り入れを想定しない設計とされたため、新大阪―淡路間の計画は中止された。阪急は2004年の審議会で十三―新大阪間の構想を提案するが、費用対効果で低評価となって答申の中長期プランからは外された。

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