外債・投信に運用広げても地域銀行はジリ貧 人口減と高齢化が進む中で八方ふさがり

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また欧米の銀行は、非金利収入である手数料で利益を稼いでいるが、邦銀は非金利収入が少ないことがしばしば指摘される。しかし、日本では手数料を払うことへの消費者の抵抗も強い。地域銀行のネットの手数料収益を表す役務取引等利益も2013年3月期の4790億円に対し、2017年3月期は5010億円であまり増えていない。金融庁が投資信託や保険の販売にまつわる手数料の適正化をはかったこともあり、2015年3月期の5550億円からはむしろ反落している。

過去の資産の食い潰しが続く

ところが、資金利益や役務取引利益などのトップラインが伸びない中で、地域銀行の当期純利益は2013年3月期の8157億円から2017年3月期には1兆0002億円へと増えている。その理由は一つは企業倒産が少なく、与信費用が減ってきているためで、銀行によっては、過去の引当金の戻し入れが繰り入れを上回る例も多い。もうひとつは株価の上昇により株式関連の有価証券売却益が出ていることによる。ちなみに、マイナス金利の導入で国債の金利が低下(国債格は上昇)し続けた2016年前半までは国債の売却益出しに頼っていた。本業の利益が細る中で、過去の資産を食い潰している格好で、ジリ貧が続く。

トップラインが伸びない原因には、金融政策のみならず、銀行間の競争で、金利の潰し合いが続いていることも大きい。金融庁はこれを避けるために、統合や合併を推進してきた。だが、昨年は、ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の統合、第四銀行と北越銀行の統合には公正取引委員会から「待った」がかかっている。日銀の金融システムレポートでは、従業員数や店舗数の多さから経費が重く、欧米の銀行に比べて収益性の低さにつながっているという指摘もされている。

ちなみに、バブル崩壊やリーマンショックを教訓に銀行の財務上の規制が強化されているため、邦銀は短期的な金融市場の混乱には耐えうるとされている。しかし、現在は、低金利が長期化したことからボラティリティ(価格の変動率)も低くなっているため、平常時に比べてリスクが過小評価されている可能性もある。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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