目指すべき賃上げ率は定昇込みなら4%だ 日銀が掲げる物価目標2%と整合的なのは4%
労働者の生活や消費行動に直結するのは、名目賃金を消費者物価で割り引いた実質賃金だ。デフレ下ではベースアップがなくても実質賃金はあまり下がらなかった。しかし、アベノミクス開始以降、消費者物価は一時的に下落する局面はあったものの、基調としては緩やかに上昇している。安倍政権発足時(2012年10~12月期)から直近(2017年7~9月期)まで消費者物価(持ち家の帰属家賃を除く総合)は、消費税率引き上げの影響もあって6%近く上昇した(消費税の影響を除くと3.5%)。この間の名目賃金上昇率は2%弱にすぎないため、実質賃金は4%近く低下している。
2018年度の消費者物価は、景気回復に伴う需給バランスの改善、円安、原油高に伴う輸入物価の上昇などから、足元のゼロ%台後半から1%程度まで高まることが予想される。名目賃金の伸びが変わらなければ、実質賃金はさらに下がってしまう。
労働需給、企業収益、物価と条件は整っている
2018年の春季交渉を巡る環境を確認すると、失業率は完全雇用とされる3%程度を下回る2%台後半まで低下するなど労働需給は引き締まった状態が続いており、企業収益も過去最高を更新し続けるほど絶好調だ。さらに、2016年中はマイナス圏で推移していた消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は2017年1月に上昇に転じた後、9月には前年比0.7%まで伸びを高めている。賃上げ率を大きく左右する労働需給、企業収益、物価はここにきていずれも明確に改善している。2018年は賃上げにとってまたとない好機といえる。
また、安倍首相は経済界に対し「3%の賃上げ」を要請しており、2018年度税制改正では賃上げ促進税制の拡充を図る方針である。しかし、賃上げ要請、賃上げ促進税制自体は安倍政権発足直後の2013年度に始まっており、それでも賃上げ率が低水準にとどまっていることからすれば、3%の賃上げが一気に達成されることはないだろう。
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