日本の「農家民泊」が秘める小さくない可能性 イタリアでは一大産業になっている

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──近年の日本では国産のコメの競争が熾烈です。

エンドユーザーを見据えた集約型のコメ作りをしているかどうかだ。コメはここ40年で半分の消費量になった。大消費地・東京でコメを売りたいという人がいるが、東京は一人暮らしが半分。家族数も少なく、消費量は月に一世帯2キロ程度しかない。この中で、単純にコメを売っても過当競争になるばかりだ。また食べ方も提案しないと、消費は伸びない。僕たちはむしろ「環境」を売り、消費量を増やしたらどうかと勧めている。

──環境を売る?

たとえば兵庫県豊岡産米での試みだ。コウノトリの産卵ができる環境に戻すことができたのなら、コシヒカリの販売を前面に出すのではなく、産地の豊岡の環境を売り込むほうがいいと。

10年ほど女子大で食文化論を教えていて、学生にアンケートを取った。興味あるのはトップがダイエット、2番目が美容。できるだけコメを食べずにダイエットしようとする。それなら、彼女たちに食べてもらうには「ヘルシー、ビューティー&エコロジー」。コウノトリを戻せたのは環境調査の生物多様性が尊重されたからだ。田んぼの生物多様性に注目し、そこでスポーツ栄養士と料理家の手を借りて、女性とマスメディアをターゲットにする。食べることは美しくなり、環境に貢献するというコンセプトにしたら共感度がすごく高い。このマーケティングはスローフードで学んだことだ。

定住移住のニーズが高いのは20代から30代

『田舎の力が 未来をつくる!: ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革』(合同出版/231ページ)(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

──若者を引き付けよと。

行政も地方への定住促進をうたっている。今、定住移住のニーズが高いのは20代から30代。一番の条件は仕事があることだ。3年後に生計が成り立つかメドを提示しないと若者は移住してこないという。そこまで考えた事業主体は、たとえば石川県白山市の株式会社六星をはじめ少なくない。

──中山間地で農家民泊を増やすにはIT活用もありですか。

イタリアばかりでなく、グリーンツーリズムとしての農家民泊は、英国やオランダをはじめ欧州で盛んだ。日本も有機農業を実地体験する世界的なネットワークに加わったらどうか。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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