小田急新ダイヤで勃発、京王との乗客争奪戦 始発駅増と値下げ、どちらの戦略に軍配?

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続いて所要時間を見ると、昼間の時間帯では京王の準特急は新宿まで直通で最短31分。小田急は新百合ヶ丘で快速急行に乗り換えて最短35分。所要時間が短く乗り換えもない京王のほうが明らかに便利だ。これらを見ると京王の利用者のほうが多いのは納得がいく。

しかし、朝ラッシュの時間帯はやや状況が変わる。多摩センター―新宿間の所要時間は京王が直通の区間急行で50分強。小田急は乗り換える必要があるものの所要時間は最速43分。直通を取るか、早さを取るか。両者は一長一短だ。1カ月通勤定期の価格を比較すると小田急が1万2940円、京王が1万2680円。京王のほうが安いとはいえ、その差はわずか260円。朝ラッシュ時では、両者の条件は伯仲している。

小田急多摩センターー新宿間を直通する通勤急行の新設で、ラッシュピーク時の所要時間は40分となる(撮影:風間仁一郎)

今回のダイヤ改正で小田急は小田急多摩センターの利便性向上に打って出る。まず、これまで千代田線に乗り入れていた多摩急行を廃止し、代わりに小田急多摩センター―新宿間を直通する通勤急行を新設する。新宿までの所要時間はわずか40分へと短縮する。さらに朝の時間帯に始発列車を6本設定。京王よりも短い時間で新宿に直通し、しかも座って通勤できる。これは小田急にとって大きなアドバンテージだ。

京王は加算運賃を前倒しで引き下げ

ライバルの京王はどうか。もちろん、小田急の動きを黙って見ていたわけではない。ダイヤ改正発表より2カ月以上前の8月30日、まるで小田急の発表を見透かしていたかのように、京王は小田急と競合する京王多摩センター―新宿間の「運賃値下げ」を仕掛けてきた。現行の339円から319円と20円安くなり、小田急との差は51円に広がる。

京王は相模原線の建設費865億円を回収するため、1979年から通常の運賃に加算運賃を上乗せしており、距離に応じて10~80円の範囲で設定されている。京王は来年3月から加算運賃を最大20円引き下げるが、その理由に「加算運賃による建設費の回収が順調に進んでいる」(京王広報部)ことを挙げる。

また1カ月定期の価格は1万1930円と現行よりも750円安くなり、小田急との差は1010円に広がる。企業が従業員の通勤定期代を負担する場合、従業員の希望するルートではなく、最安値ルートに基づき支払うと決めている企業もある。そうした企業は多摩センター―新宿間の定期券代を京王ルートの金額で支給することになる。小田急ルートを使いたい場合、利用者は差額を自己負担する必要がある。

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