「タダ同然の廃墟物件」に買い手が集まる理由 空き家流通に訪れている変化の風

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

その要因の1つは、従来の不動産取引とは違う掲載条件の緩さにある。価格が決まっていなくても、どんな場所でどんなに古くても、残置物が多くて片付いていない状態でも掲載できるほか、本人の許可があれば親や親戚が所有する物件を無料で掲載できるのだ。

従来の不動産流通では残置物があるだけで扱ってもらえないと思われていたことを考えると、これまで弾かれていた物件が流通に乗るようになったのである。素人の文章、写真にアドバイスをしたり、校正するなどして読まれるようにしている点も大きい。

「もらってくれるならタダでも」という例も

この活況ぶりから、いくつかわかることがある。1つは、売る側の意識の変化だ。家いちばを利用する空き家所有者にとって不動産は重荷であり、資産ではない。実際、「もらってくれるならタダでもいい」という例が多く、最近ではタダなうえに「残置物等処理代として50万円を進呈しますという」秋田の物件さえも出てきている。

150万円で取引された高原の別荘。別荘ではこれから2次相続で売りに出される物件が増えることが予想される。この物件のような保存状態のよい物件であれば、かなりお得だ(写真:家いちば提供)

価格がついている物件でも、かなりの破格値で売買されている物件が少なくない。たとえば、少し前に契約が成立した高原の別荘は、バブル時代に土地代だけでおそらく数百万円で取引されていたと思われるうえ、建物も残置物さえ撤去すれば住めるような状態だった。それがなんと150万円。売買に時間をかけるより、早く手放して楽になりたいと考えている売り手の気持ちがすけて見える。

買う側も変わってきている。資産としてではなく、利用するものとして不動産を考えていると言えばいいだろうか。たとえば、前述の高原にある別荘を購入した人は、「10年遊んで、10年後にまた150万円で売ればいい」とクール。別荘維持のためにかかる管理費は、「遊ぶための費用」と割り切っているようだ。

神戸の無料物件の内部(写真:家いちば提供)

廃墟同然の神戸の無料物件にも、30人以上が興味を示した。玄関が壊れているため、自由に内見してもらうようにし、入札にしたところ、7人が応札。タダでいいという物件にもかかわらず、40万円で売れた。使い勝手があまりよくなさそうな物件を、おカネを払って手に入れる行為はなかなか理解しがたいが、自分で好きにしていい建物を手に入れたい人には面白い「おもちゃ」を買った感覚なのかもしれない。

次ページ売買の「障壁」となっているものは
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事