JR名古屋駅が進める「名古屋めし強化」の勝算 駅ナカにあふれる「みそカツ」や「天むす」

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名古屋駅の駅ビル、JRセントラルタワーズとJRゲートタワーにもレストラン街がある。その店舗構成は、フレンチ、焼肉、すし、中華などバラエティに富む。名古屋めしの店はゼロではないが、名古屋うまいもん通りと比べると圧倒的に少ない。その点で両者はうまく差別化を図っている。

名古屋うまいもん通りに12月に出店する「山本屋本店」のみそ煮込みうどん(写真:JR東海)

12月には、うまいもん通りに4店舗が新規出店する。うち2店が、みそ煮込みうどんの「山本屋本店」とえびフライが名物の「まるは食堂」だ。名古屋めしの存在感がさらに高まることになる。だが、駅から一歩外に出ると、その存在感は駅の比ではない。新幹線側の駅前に広がる地下街「エスカ」では、33ある飲食店のうち実に23店が名古屋めしを提供する。まさに激戦区そのものだ。

JR名古屋駅は実は劣勢?

エスカの名古屋めしシフトは、駅前にある「ビックカメラ」が開業した2003年にまでさかのぼる。それ以前、ビックカメラの場所には衣料雑貨系の店舗があり、エスカもその店の客層に合わせた飲食店を並べていた。しかし、2003年にビックカメラがオープンすると、エスカも店舗の入れ替えに舵を切り、徐々に名古屋めしの店を増やし始めた。その結果が、今日の23店につながっている。2015年に名古屋めしを強化したJR名古屋駅は、エスカから見れば、「何を今さら」といった感じなのだろう。

名古屋うまいもん通りは名古屋めし強化で客をさらに取り込めるか、12月の新規出店の成否が注目される(記者撮影)

エスカの名古屋めしシフトは大当たりし、「観光・出張客も地元客に負けないくらい多い」(エスカ広報担当者)という。そう考えると、名古屋駅の名古屋めしシフトは、実は駅の外で勢いづく名古屋めし店に客を取られないための囲い込み策だという構図が浮かび上がってくる。

名古屋駅周辺の地下街はエスカだけではない。「ユニモール」「メイチカ」など多くの地下街があり、それぞれが独自の飲食店網を展開する。新幹線では独り勝ちのJR東海が、飲食店戦略では多くのライバルと向き合っている。「男子家を出れば七人の敵あり」という格言は、JR東海が名古屋駅で置かれている現状に、まさにぴったりくる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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