スバルでも無資格検査、30年以上常態化の謎 安心・安全が看板のメーカーで何が起きたか

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今回の問題で深刻なのは、「代行押印」が行われていたことだ。研修中の従業員が、資格のある監督者から借りたはんこを、検査を証明する書類に押していた。他人のはんこで完成検査終了の認定をすることは、公文書偽造にも繋がりかねない。年に一度の監査をしてきた国土交通省からも「ルールが明文化されていないので、監査をしても(行われていることが)良いのか悪いのか判断できない。透明性が低すぎる」と厳しい指摘を受けているという。

品質保証本部長を務める大崎篤執行役員は「現場で、人のはんこを使うのはおかしいのではないか、と思った者がいても、代々引き継がれていたことを上長に「おかしい」と言える雰囲気ではない」と認めた。吉永社長も改めて「偽装をしたというつもりはない。組織代行の範疇だと思うが、人のはんこを代わりに使うのは、確かに違和感がある」と述べる。

問題認識から発表まで24日間

吉永社長は10月25日の東京モーターショーの内覧会で「スバルには最高水準の安全を追求するDNAが根付いている」と熱く語っていた(撮影:大澤 誠)

「あのスバルが・・・残念だ」と漏らす声が、会見と同じ日に開会初日を迎えた東京モーターショーの会場のいたるところから聞こえてきた。10月25日の報道関係者向け内覧会でも、吉永社長は新たなコンセプトカー「VIZIV(ヴィジブ)」を紹介し、創業時から変わらない「安心に支えられた愉しさ」を押し出していただけに、衝撃は大きい。

9月29日深夜、日産の問題を受けて国交省は各メーカーに対し、完成検査に関する調査を求める通達を行った。スバルが自社の完成検査のプロセスに「疑義」があることを認識したのは、週明けの10月3日。発覚した時点ですぐ、無資格の従業員による完成検査は打ち切り、国交省に法令解釈についての問い合わせを始めていた。

吉永社長がこの事実を知ったのは、10月11日。しかし翌12日には社内調査の状況について記者から問われた際、「今のところ問題ない」と発言していた。スバルが事実を発表したのは、その2週間以上先の27日。遅すぎるタイミングだ。これについて吉永社長は「隠そうとしたつもりはない。無資格検査を止めたことや、国交省とやりとりがあるので、30日までに答えを出せばよいと思っていた」としおらしく釈明した。

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