前代未聞の奇妙な選挙、これこそが「国難」だ 主役2人の明暗くっきり、次の離合集散始まる

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政府与党は選挙結果を受けての特別国会を、11月1日に召集する方針だ。首相の「盟友」とされるトランプ米大統領の同5日の初来日をにらんだ日程で、1日の首相指名後の組閣では、首相が仕事人と名付けた全閣僚が再任される段取りだという。自民圧勝を受けて株価も23日の寄り付きから上昇している。何もかもが首相の強運を際立たせている。

小池氏最側近で希望の党の公認調整を仕切った若狭勝氏は、小池氏から引き継いだ東京10区であえなく落選した。解散前から他党の批判を浴びた小池氏の「選挙結果をみて決める」とする首相指名だが、候補を誰にするのかは選挙戦最終日(22日)の深夜にパリに飛び立った小池氏が帰国する25日午前にも、当選議員たちの「議員総会」で決めるという。

パリの空の下で「今回は完敗です」「おごりがあったと反省している」と憮然とした表情で取材に答えた小池氏は、代表続投を前提に「国会のことは当選された国会議員の方々にお任せします」とも語った。しかし当選議員の間では、「小池氏と前原氏が敗北の原因、どちらも責任は免れない」(民進系中堅議員)との声もあり、選挙後のゴタゴタは避けられそうもない。

異様な選挙戦そのものが「国難」との声も

一方、希望を押しのけて「反自民の受け皿」として野党第1党に躍進した立憲民主党の枝野幸男代表にも、新たな野党勢力再構築への重圧がのしかかる。希望の党に合流せず、立憲民主にも駆け込まずに無所属で勝ち抜いた「一騎当千の侍」たちとどう連携するのか、さらには、希望の党も含めての野党再編論にどう対応するのか…。次の国政選挙となるはずの2019年夏の参院選をにらんだ離合集散劇は早くも始まっているようにもみえる。

開票速報を受けて、自民党本部で当選者へのバラの花をつける首相の表情は終始こわ張っていた。「こみ上げる笑いをあえて隠した」と周辺が語るように、「ここで、おごりや傲慢さをみせれば、圧勝ムードなどすぐ消える」(自民長老)ことを自覚しているからだろう。

首相は9月25日夕の解散表明会見で今回衆院選を「国難突破」と名付けた。自民圧勝とは裏腹に、選挙期間中の調査や投開票日の出口調査などの内閣支持率を見ると、ほとんどで「支持」を「不支持」が上回っている。選挙後の野党の離合集散騒動や、お騒がせ女性議員の当落騒ぎも含め、有識者の間では「選挙戦で露呈した永田町政治の異様な実態そのものが国難」(政治学者)との声も広がる。
    

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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