久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」 コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題

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問題を起こした神鋼の人たちは、そういうことを考えなかったのか。神鋼経営陣は納期の影響を挙げていたが、偽装した部材が原因となって事故が起きたときのことを考えずにこうした偽装をするのか。あまりに考え方が浅薄すぎて、利益至上主義に毒されているといわざるをえない。

今後、リコールや部品交換の費用が発生すれば、納入先企業はそれを神鋼側に求めてくる。逆に求めなければ、株主から追及されることになる。

信用はゼロではなくマイナス

信用力低下の影響も大きい。神鋼の社長は「信用はゼロになった」と言ったが、私はゼロではなく、マイナスになったと思う。信用力は大きく毀損した状況だ。神鋼の株価も連日ストップ安となるほど下がり、時価総額は約4割も減少した。マーケットでの信用低下で、経済的影響は大きい。金融商品取引法でストレートに損害賠償の請求ができる状況であり、社長など経営陣の責任が問われることになる。

改ざん対象は売り上げの4%程度などと言っているが、大量保有報告書でいえば、5%でも大量という意味になる。4%を「大量でない」という意味で言ったとすれば、それは非常に愚かな話で、ほとんど大量に近いと考えるべきである。

――神鋼は8月末に改ざんを把握し、1カ月後に経済産業省へ報告、その10日後に対外公表を行った。こうした会社の対応をどう見るか。

神戸製鋼は「明らかなコンプラ違反」と断言する(写真:大澤誠)

いえるのは、対応が遅いということ。わかったことだけでいいから、遅くとも1~2週間以内には公表すべきだった。役所にはとりあえずすぐに一報を入れるべき。1カ月後というのは不思議な話で、経産省とは手を握っているから大丈夫だといった大会社意識があったのか、理解に苦しむ。

しかもその一報を入れた後、対外公表したのは3連休中であり、意味のない先延ばしだ。新聞休刊日前のタイミングでもあり、これは隠蔽ではないかとの疑念は強い。

国民感情としては、やってしまったことは仕方ないとしても、それを隠蔽したり、ウソをついたりすることに対する憤りのほうが大きい。その意味で、今回の対応は先延ばしに次ぐ先延ばしで、汚い手を使って物事を小さく見せようとした、誠に拙劣な対応だ。

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