丸亀製麺の創始者が惚れた「晩杯屋」の稼ぎ方 客単価1300~1500円の超コスパ立ち飲み屋

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「晩杯屋」を創業した金子源さん

晩杯屋を創業した金子源(41)はひとかどの人物である。群馬県新里村(現・桐生市)、鉄工所の7人兄弟姉妹の下から2番目の生まれ。鉄工所は1973年の第1次オイルショックで破綻、畑仕事や山菜採りをするなど赤貧洗うがごとき幼少年時代を過ごした。

金子は進学校の県立太田高校を卒業。新聞配達の奨学生となって予備校に通った。航空自衛隊のパイロットに憧れて受験、70倍の狭き門を突破したが新聞配達中に足首を骨折、最終の身体検査ではねられた。一般の試験で海上自衛隊に合格したが海上勤務ではなく市ヶ谷、六本木の自衛隊に勤務した。だがオペレーターという雑用係に嫌気がさして退職した。

金子は約5年間の自衛隊勤務時代、給料を全部飲み歩いた経験から「飲食店でもやろう」と考え、25歳のとき「牛角」などを運営するレインズインターナショナルに入社。本社研修3日目で「牛角中野新橋店」の店長に抜擢された。

成功するには「仕入れ力」「買う力」がカギ

そこで働くうちに「飲食店を成功させるのはよい食材を安く仕入れる力にある」と痛感、同社を半年で辞めた。そして「仕入れ力」や「流通」のノウハウを学ぶために青果市場や水産会社で約5年間アルバイトした。

金子は市場の本質が「分化」というシステムで成り立っていて、仲買人は毎日滞りなく荷物をさばこうと仕事をしていることを知った。仮に取引先の寿司屋や料亭などが返品してきた場合、その魚は信頼できる取引先に捨て値か無料で譲るより仕方なくなる。もちろん仲買人は返品で損した料金は別の日に上乗せして、必ず帳尻を合わせるのだ。

そういう市場のシステムの中で「仕入れ力」「買う力」を得るためには、「荷物を分けてもらう」というスタンスが大切だ。たとえばサンマ50箱でも100箱でも仲買人の言い値で買い、「分化」を完了させる、つまり荷物をさばく手伝いをするのだ。それを続けることで仲買人との本物の信頼関係ができ、魚の着荷が少ないときでも融通してもらえるし、また大量にさばけたときは残りの魚を破格の値段で譲ってもらえる。

後に金子は独立して晩杯屋を展開するとき、仲買人との間に築いた信頼関係を武器に「仕入れ力」「買う力」を発揮する。

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