元テスラ幹部が予言する「日本車」の未来 EVシフトで泣く会社・笑う会社はどこか?

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独フォルクスワーゲン(VW)のEV「eゴルフ」。VWは今年9月、2025年までにEVだけで50車種投入すると発表した。各国で進むEVシフトの波に対応した形だ(写真:フォルクスワーゲン)

――いつEVの販売台数がガソリン車の販売台数を超えますか。

投資銀行の推定では、EVが2025年に自動車市場の10~15%を占めるようになるとされているが、大間違いだと思う。2025年にはEVがガソリン車を凌駕しているだろう。私の故郷のカリフォルニア州パロアルトでは、すでに新車販売の22%がEVだ(記者注:パロアルトはテスラの本社所在地)。

一方、車の販売台数は今は年間1億台だが、EV化で車の寿命が延びれば減る。より減り方が大きいのは当然ガソリン車。だからいまEVを造っていない会社、特にトヨタとホンダは困った事態になるだろう。

EVを造れない会社には厳しい将来

――なぜテスラを退社したのでしょうか。

私がテスラに入社した2006年、テスラは(最初の生産モデル)「ロードスター」の開発中だったが、当時からその次に「モデルS」、そしてモデル3を造る計画をすでに持っていた。それがいま計画どおりになっている。ベンチャーが当初の計画どおりにビジネスを進められることはたいへん珍しいと思う。

私のテスラ最後の日はモデル3が初めて出荷された日で、辞めたのはその日をもってやりたいことはやり切ったからだ。もともとテスラに入ったのはEVを普及させるためだった。だから、テスラが成功するかどうかより、自動車業界全体が本腰を入れてEVを造るようになるのが目標だった。そして今は実際にEVの時代になっている。日本のメーカー以外はどこもEVに力を入れている。EVを造れない会社は将来が厳しい。

そして、EVの時代が実際に来たので私がテスラにいる必要はなくなった。私のテスラ入社当時は、テスラが日本企業とビジネスを始める時期だったが、(パナソニックとの協業を強化するという)はっきりとした役目が私にはあった。しかし、いまやテスラとパナソニックの関係は盤石になった。今後の成功はテスラの大量生産が軌道に乗るかにかかっている。私の役目はもう果たした。今後はテスラに入社したときのように初心に返り、環境、特に地球温暖化対策に力を入れるため、植物工場のベンチャー・米「Plenty」に参画する。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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