ロヒンギャ難民50万人超「集団感染」の危機 現地入りした医師が見た悲惨な難民キャンプ

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ロヒンギャ難民には、女性や子どもが多い(写真:Antonio Faccilongo)

食糧不足による乳幼児の栄養失調は深刻で、意識もうろうとした状態で運び込まれる子どもが少なくない。いずれの場合も重症患者はキャンプ内にあるMSFの既設の医療施設に緊急搬送するが、そこも50床を70床に増やしたが追いつかず、百数十人を収容せざるをえない状況だ。地域の公立病院もキャパシティを大きく超えて患者を受け入れている。

清潔な飲料水が得られないのが何より深刻

――衛生状態が劣悪で重篤な感染症が懸念される。

マイナゴナにあるMSFの診療所で診療する加藤会長。1日300人近くが訪れる(写真:MSF提供)

公衆衛生の観点でいうと、清潔な飲料水が得られないのが何より深刻だ。難民たちは手掘りの浅い井戸や水田、水たまりから集めた水を飲んでいるが、こうした水の多くは排泄物で汚染されているため、診療所でも下痢性疾患の患者が目立つ。

脱水症状で生死の境をさまよう成人患者も多いが、これは成人にはめったに見られないことだ。バングラデシュ政府も(はしか、コレラ、チフスなど)重篤な感染症が蔓延することを非常に警戒している。

正確なデータはないが、ロヒンギャの予防接種率はミャンマー国内の水準に照らしても低いと考えられ、数十万人が不衛生な環境で密集して暮らす状況が長引けば、数万人が死亡する集団感染がいつ起きてもおかしくない。集団予防接種を至急実施するとともに、感染が疑われる患者を隔離する必要があるが、バングラデシュ当局がそうした措置をとれる状況にはない。MSFはクトゥパロンの医療施設に隔離用区画を独自に用意した。

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