次期FRB議長、ウォーシュ氏だと市場不安定化 タカ派とも言い切れない「微妙な発言」を読む

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イエレンFRB議長の任期は2018年2月3日まで。その後、この席に座るのは誰なのか。イエレン議長続投説も(写真:UPI/アフロ)

10月5日、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融規制担当副議長として、ランダル・クオールズ氏が就任することが決まった。上院本会議でFRB理事として指名承認を受けた後、金融規制担当副議長への就任が別途承認されるという2段階の手続きを取った。

7月10日の正式指名で始まったドナルド・トランプ大統領によるFRB関連人事第1弾が決着したわけだが、トランプ大統領には空席が続く2人の理事と、世界が注目する議長・副議長の指名人事が待っている。特に後者については、トランプ大統領が9月27日に、次期FRB議長候補を2、3週間以内に発表する考えを示しており、その発表が間近に迫ってきた。

5日時点の報道によれば、ジャネット・イエレン議長再任という選択肢はまだ残っているようだ。スタンレー・フィッシャー副議長が9月6日に10月中旬の退任を表明したことは、イエレン議長再任には追い風であろう。議長・副議長というFRBの司令塔を総入れ替えすることによる、金融市場の意図せざるボラティリティの高まりが避けられるためである。

イエレン氏再任かパウエル氏なら市場は安心

一方、議長と副議長が(ほぼ)同時に変わるケースは、FRBが現体制となった1936年以降で4度あった。1948年(トマス・マッケーブ議長就任、副議長は1955年まで空席)、1979年(ポール・ボルカー議長、フレデリック・シュルツ副議長就任)、2006年(ベン・バーナンキ議長、ジャネット・イエレン副議長就任)、2014年(イエレン議長、フィッシャー副議長就任)である。

現在、新たな議長候補として名前が挙がっているのは、ゲイリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長、ジェローム・パウエルFRB理事、ケビン・ウォーシュ元FRB理事。この中でサプライズが少ないのはパウエル理事の議長指名である。中道派として知られるパウエル理事の議長昇格は、金融政策の継続性担保という点で金融市場参加者が受け入れやすい。

コーン氏の指名は、同氏がFRB関係者(FRB理事、地区連銀総裁、その経験者)ではない「アウトサイダー」である点と、トランプ大統領による金融政策への介入リスク(ひいてはFRBの独立性への懸念)という点で問題がある。上述した4つの総入れ替えケースを振り返ってみても、アウトサイダーが就任したケースは、1979年、民間金融機関の取締役等を務めていたシュルツ氏の副議長就任しかない。またアウトサイダーの議長就任としてはウィリアム・ミラー議長(1978-1979)という前例があるものの、ミラー氏は経験不足から金融市場参加者の信認を得られなかったことで知られている。

コーン氏の経験不足は、金融市場に意図せざるボラティリティを生み、米長期金利を押し上げる要因になりえよう。一方、保護主義を掲げるトランプ政権の意向を忖度(そんたく)した、過度な金融緩和によるドル安誘導も警戒される。コーン氏自身がイエレン路線を継承しようとしても、トランプ大統領のツイートがその邪魔をするという構図は、トランプ政権の外交政策をめぐる動きから容易に想像できる。

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