川重・三井造船、両社長が語る破談の真相(上) 川崎重工業 村山滋社長

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再成長は十分できる。航空、2輪、鉄道車両などに期待

――現実問題として、重工大手メーカーの売上高はずっと頭打ち状態です。川重にしても、前期の連結売上高は1.3兆円弱で10年前とほとんど変わっていません。再編なしに再成長は可能でしょうか。

単に売上高だけを追い求めるような経営はしない。売上高2兆円ありきとか考えるから、わけのわからない合併をやる、なんていう話になる。大事なのは質(利益)を伴った成長だが、私は十分できると思っている。

たとえば、航空関連では旅客機の胴体、エンジンなど製造分担品が順調に伸びている。大型2輪も成長が期待できる。2輪はしばらく赤字に苦しんできたが、東南アジアなど新興国での販売拡大と極端な円高の是正によって、ようやく元気が戻ってきた。

鉄道車両は米国での高いシェアを維持しつつ、東南アジアやインドなどのプロジェクトを受注していく。中小型ガスタービンにしても、得意とする工場などの産業用発電に加えて、今後は新興国での小規模分散型電源ニーズを取り込んでいきたい。

――ご自身が率いてきた航空宇宙部門(前期売上高2391億円)は、成長の牽引役になりえますか。

着実な成長が期待できると思う。防衛関連では、次期固定翼哨戒機「P-1」の量産機納入が今年春からようやく始まったし、並行して開発してきた次期大型輸送機「c-2」の量産開始も控えている。

一方、民間ではボーイング関連の仕事が大きな柱に育ってきた。これまでのB777型機の胴体パネル製造に加えて、787関連(前部胴体や主脚格納庫などの製造)の仕事が増えている。787用の分担製造は今年前半時点で月産5機態勢だったが、ボーイングの増産に合わせて8月時点では月産7機、年内には10機態勢にまで増やす予定になっている。

――その787用の胴体製造では、第3専用工場の建設が報じられていますが……。

ええ、3つめの専用工場を立ち上げます。ボーイングが787の派生大型機として18年投入予定の「787-10(ダッシュテン)」は、当初想定していた以上に前部胴体のサイズが大きく、既存の2工場で対応するのが難しい。最初のベーシック機の前部胴体は長さが8メートルで、今度のは倍ぐらい。うちとしてはまた大きな投資をするのも大変なので、「もっと縮めたほうがええんとちがう?」と申し上げたのだが、そうはいかんと(笑)。大きくなる分、受注の単価は高くなる。

緊張感を持って、しっかり結果を出していく

――最後にあらためて聞きます。ただでさえ、川重の事業領域は航空、鉄道車両、2輪、造船、機械、プラント、原動機など実に多岐にわたります。一連の騒動を経て、どう全社をまとめていきますか。

私は根っからの明るい性格なので、にらみを効かせるといった経営スタイルは似合わない。とにかく明るく、各カンパニーをエンカレッジ、もっとわかりやすく言うと、褒めることで各カンパニーのやる気と潜在能力を引き出したい。川重は技術をベースとした会社。優れた人材がいて、技術もある。社内全体を見渡し、成長分野にリソースをうまく割り振りながら、会社全体をもっと強くする。厳しい事業も単に切り捨てるのではなく、手を差し伸べて打開策を一緒に考えたい。

今回の一件で世間を騒がせてしまい、悪い意味で会社が有名になった。ブランドイメージが下がった面も否めない。今までに以上に役員たちが緊張感を持って、しっかり業績を上げ、結果を出していくことが必要になる。「ああいう騒動があったけれども、川重は前よりいい会社になった」と言ってもらえるよう、全社一丸となって頑張っていく。

(撮影:梅谷 秀司)

渡辺 清治 東洋経済 記者
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