大胆試算「リニア新幹線」はどこまで儲かるか 大阪開業で売上26%増でも巨大投資が重荷に

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2027年のリニア中央新幹線開業を待ちわびる名古屋。駅前では再開発が進む(撮影:尾形文繁)

時間短縮効果により新規需要も喚起される。JR東海の前提では、名古屋開業時にリニアと新幹線を合算した収入(料金単価増を含む)は、開業前から5%増えるとしている。その後も収入は毎年0.5%ずつ増えて10年後には開業前と比べ収入が10%増える。

大阪開業時には収入がさらに15%増える。名古屋開業よりも収入の伸び率が大きいのは、時短効果で現在市場シェア15%の東京―大阪間の航空機需要が、一気にリニアにシフトすると見るからだ。過去に新幹線開業に伴い航空路線が縮小ないし廃止された例は複数あり妥当性が高い。さらに、現行シェア3割程度の東京―岡山間や東京―広島間の航空機利用者のうち、一定数がリニア&新幹線に流れると同社は見る。

新規需要は時短効果だけがもたらすわけではない。リニア開業後は東海道新幹線の利用者の半分がリニアに流れるため、新幹線ダイヤに余裕ができ、熱海や浜松といった途中駅に止まる列車を増やすことが可能となる。それによって生まれる新規需要もわずかだが見込んでいる。現行では「ひかり」が1時間に1本しか停車しないような駅が、リニア開業後に1時間に3~4本止まるようになれば、利用者はわずかどころか、かなり増えるのではないだろうか。

リニア大阪開業で収入は26%増

JR東海の収入は名古屋開業後10年で10%、大阪開業時にそこからさらに15%増えるため、合計で26.5%増えることになる。在来線や関連事業の売り上げは据え置いている。

費用については現状の経費に加え、リニア維持管理費(品川―名古屋間1620億円、品川―大阪間3080億円)など、リニア開業に伴うものが見込まれている。一方で、利用者が減る東海道新幹線の維持管理費用は1割程度の減少を見込む。

収支予測には物価上昇を織り込む一方、将来の経済見通しは考慮に入れていない。JR東海は「一般的な需要予測モデルを使った予測よりも収支想定は堅め」としているが、この予測は7年前のもので、現在の状況とはかなり違う。そこで当時の前提条件を活用しつつ、最新の数字に置き換えて、編集部独自の収支予測を作成してみた。

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