テレビの「苦肉の策」にガッカリ感が募る理由 「チャンネルを変えさせまい」はバレている
当然、演じる俳優も役柄もドラマと同じだけに、視聴者はすぐに気づきません。終了直前になって初めて、「あれっ? これはCMだったのか」とわかるのです。タイアップCMは自動車や化粧品メーカーなどの大企業が多く、もともと「好きな俳優が出演しているからドラマを見ている」という好意的な視聴者が多いため、おおむね好評。ただ、今後は「毎週映像を変えて連続性のあるものにする」などの工夫がないかぎり、飽きられてしまうでしょう。
マツコが「逃げ恥」の大ヒットに貢献
もう1つ挙げておきたいのは、番組と番組の間にCMを挟まない「ステーションブレイクレス」と呼ばれる編成。これは前番組の視聴者を後番組に誘導する策であり、「前番組の人気が高い」「後番組の視聴率を上げたい」「前番組と後番組の視聴ターゲットが近い」ときなどに行われるものです。
わかりやすいもので言えば、TBSの火曜22時。前番組「マツコの知らない世界」が21時59分59秒まで放送され、22時から「火曜ドラマ」がスタートします。「火曜ドラマ」は2014年4月のスタート以降、低視聴率が続いていましたが、昨年4月からステーションブレイクレスに切り換えて地道に視聴者層を広げ、秋の「逃げるは恥だが役に立つ」の大ヒットにつなげました。もちろん「逃げ恥」が作品としてすばらしかったのは間違いありませんが、こんな隠れた策もあったのです。
さらに、「マツコの知らない世界」の高視聴率をそのまま引き継ぐことで、「王様のブランチ」内の名物コーナー・TBS瞬間最高視聴率ランキングに、「火曜ドラマ」の冒頭シーンがランクイン。強引な形ではあるものの、「このドラマって人気あるんだ」というイメージアップにつなげています。
同様に、フジテレビ平日昼の「バイキング」と「直撃LIVEグッディ!」の間にもCMはありません。時事のニュースを扱った同系番組であり違和感は少ないのですが、前番組MCの坂上忍さんと後番組MCの安藤優子さんがスタジオを挟んでクロストークすることで、視聴者の継続視聴を促しています。
ちなみに、視聴率トップの日本テレビはプライムタイム(19~23時)にバラエティ番組をズラリと並べていますが、19時台と20時台の間にCMを挟まない日がほとんど。「バラエティ番組好きの視聴者を他のチャンネルに取られない」ための編成をしているのです。
視聴者を混乱させるフライングスタート
番組編成に関する策は、まだまだあります。9月に入って民放各局の10月番組改編が出そろいましたが、なかでも注目を集めたのはTBSの決断。「20時、22時の番組を全曜日で正時(0分)スタートにする」という策です。
「正時スタート」でピンときた人はテレビ通。プライムタイムの番組は、「19時56分」「21時54分」などのスタート時間が多く、テレビ業界ではこれを「フライングスタート」と呼んでいます。「他局がCMのとき、いち早く番組を始めて視聴者をつかもう」という策なのですが、視聴者にしてみれば「中途半端でわかりづらい」というだけ。特にライトな視聴者には、「せっかくテレビをつけたのに、もう始まっていてガッカリした」という人が少なくないのです。
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