店頭でコーヒーを無料配布、消費不振でも急成長する輸入食材店
「コーヒーをどうぞ」。店頭で無料配布されるコーヒーを飲みながら、ゆっくり輸入食材の買い物をする。そうした新しいスタイルの食材店で急成長しているのがカルディコーヒーファームだ。
このコーヒーサービスは、集客に苦戦した下北沢店で、試行錯誤の末にたどり着いたもの。出されるコーヒーは、誰が手に取るかわからないので、子どもも大人もおいしく飲めるよう、ミルクと砂糖が入っている。しかし単なる甘いコーヒーではない。看板商品であるコーヒー豆「マイルドカルディ」を使い、さらに風味を落とさないよう、ミルクと砂糖はその場で入れている。そのミルクと砂糖もスプーンで分量が決められている、こだわりの品なのだ。
「サービスだからこそ、絶対においしいものでないと意味がない」。コーヒーサービスを開始した当時、下北沢店長だった榊原直子・店舗統括部長は主張する。榊原氏は店舗の視察に行くと、まずそのこだわりコーヒーの味をチェックするという。
加工食品にも「旬」 商品知識豊富なスタッフ
カルディの集客へのこだわりは、扱う商品の変化の早さにも表れている。半月ごとにイベントを切り替え、季節感の乏しい加工食品に、生鮮食品のような「旬」を持たせる。そして店の雰囲気もガラッと変える。カルディの商品で季節に関係なく定番化されている商品は全体の半分ほど。残り半分は目まぐるしく変わっているのだ。「いつも一緒じゃない。いつ来ても新しい商品がある、そういう楽しい店づくりを目指している」(榊原氏)。特に店の入り口はその主役。まるでフランスのマルシェ(市場)のような店先に、真新しい商品がどっさり。大きなイベント時には1万もの商品が店内外を埋め尽くす。
店舗スタッフも集客の大事な要素だ。ほぼ全員女性だが、つねにキビキビと動き回り、作業をしながらでも声を出す。そうして店の活きのよさを演出して客を呼び込むのだ。
また、スタッフは商品のほとんどを自ら試食している。このため使い方の難しい輸入食材であっても、しっかりとした商品説明やメニュー提案もできる。客の一歩踏み込んだ質問にも答えられ、食の話題で会話が弾むこともしばしばだ。
客との会話、そこから貴重な情報をつかむことも多いという。客からおいしいと勧められたあるドレッシング。試食したスタッフもそのおいしさに納得、店で扱うようになった。そのドレッシングは人気商品になり、今では定番商品となっている。また、従来は中身の見えない銀色のレジ袋を使っていたが、「ゴミ袋として利用したい」という客の話を受け、早速半透明のレジ袋を開発している。
現在の店舗数は144店と5年前の4・4倍。ショッピングモールでの出店を始めてから拡大ペースが速まった。去年、今年と年間30店を出している。既存店の売り上げも前年比5%増と好調だ。食材店の新しい楽しみ方を提案したカルディの高成長は、しばらく続きそうだ。
(週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら