ホワイトハウスでは、自分なしに大統領は機能しない、とメディアに信じ込ませる人物が現れることが多い。「ブッシュ(子)大統領の頭脳」と呼ばれたローブ補佐官や、「ジョンソン大統領の守護天使」として雑誌の表紙を飾ったモイヤーズ報道官のような人たちだ。こうした絶対的側近は、劇的なストーリーを嬉々として披露したがる。いかに自らが政権を危機から救ったか、といった話だ。
だが彼らは往々にして一線を踏み越える。レーガン政権で自らを「首相」になぞらえたリーガン首席補佐官は、レーガン大統領とソビエト連邦の最高指導者ゴルバチョフ氏の写真撮影に割り込み、不興を買った。さらに、大統領の妻ナンシー氏と対立するという致命的ミスを犯し、辞任に追いやられた。
トランプもバノンもホワイトハウスには不適格
大統領にしてみれば、切れ者の側近によって窮地から救われた、という記事を見るのは気分のいいものではない。賢い大統領なら、目立ちたがり屋を排除するものだ。オバマ前大統領にはそうした威厳があったので、側近が目立とうという気を起こすことはなかった。
先頃、首席戦略官を解任されたバノン氏は、大統領側近としてはあまり賢い人物ではなかった。功名心を抑えきれなかったからだ。一方、トランプ大統領のエゴは極めて敏感だ。近親者とゴマすりに囲まれた仕事人生を送ってきたからである。2人とも、ホワイトハウスには不適格な人間なのだ。
トランプ氏は自らの直観に頼って大統領選挙を戦った。その直観とは、ブルーカラー労働者や経済的な不安を抱えている層には、それがメキシコ移民だろうが、金融界の大金持ちだろうが、とにかく不満のはけ口が必要だということだった。そうした考えに最もフィットしたのが、たまたまバノン氏だったにすぎない。
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