最強の官僚体制が芽を摘む地方経済の活性化 中央集権型では人口増や規制緩和は望めない

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問題は、こうした中央官僚や自民党の政治家が実施している地方経済の活性化が本当に効果的な成果を上げられるのかどうかだ。

筆者には中央政府が画一的におカネをばらまき、何もかもコントロールしようとする旧態依然の政治手法が現在も延々と繰り返されている、としか見えない。政権交代のめったにない日本では、変化がない。というよりも変化できない、と言わざるをえない。政治家の選挙システムなどと複雑に絡み合っている、と考えるのが自然だ。

そもそも現在の地方経済の衰退ぶりは、成長率の変化とかそういうものよりも人口の減少によってもたらされている。たとえば、人口70万人超の「政令都市」でも人口減少に歯止めがかからないところまで来ている。

静岡県静岡市は、政令都市ではじめて70万人を割った都市として注目された。2003年に清水市と合併して、政令都市の仲間入りを果たしたものの、年間3000人の人口減少に歯止めがかからない。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年には政令都市の6都市が70万人割れし、川崎市を除いてすべての政令都市で人口が減少するそうだ。

雇用さえ増えれば何でもいい?

要するに、現在の政府が着手している「まち・ひと・しごと創生総合戦略」での雇用創出などは、米国のトランプ大統領がやっている雇用創出と同じで、雇用さえ増えれば何でもいい、おカネをばらまいて工場やビルといった建造物、すなわち「箱」さえ造れば、あとは知らない……。といった地方経済活性化策に近い、と言っていいかもしれない。

人口減少問題の解決策なくして、地方経済の再生はないだろう。とはいえ、人口増加を目標とした経済活性化は、目標をあいまいにするだけ、という指摘もある。

では、具体的にどうすればいいのか……。

かつては日本と同様の中央集権型の行政システムを採っていたフランスでは、おカネの流れを中央省庁からトップダウン方式で地方自治体に交付するのではなく、地方自治体に権限と同時に予算も移譲。その結果、フランスでは地方経済が活性化し、人口問題も減少から増加に転じているといわれる。

日本でも、国から交付される交付金を一括して地方に給付し、その使い道を自由にすることが一案として挙げられる。たとえば、学校の認可といった仕事も国の仕事は最小限に抑えて、その学校が設立される都道府県などに大幅に権限を移譲する。

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