モスバーガー、出口の見えない業績不振 “場当たり主義”に敗因? 

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「緑モス」転換の失敗 深まるオーナーとの溝

その象徴が04年、赤色を基調とした看板から緑色を基調とした高級業態「緑モス」への改装だ。

緑モスは当時アメリカで流行し始めたファストカジュアルというレストランとファストフードの中間のサービスを目指した。付加価値の高いメニューを「ゆったりと落ち着いた快適空間」で提供するのがコンセプト。男女別の化粧室を設置し、店内は全面禁煙。一方で快適性を重視し座席数は縮小。しかし、入り口に張られた禁煙マークを見て、男性客の足は遠のいた。客数は05年度から06年度にかけて増えるどころか、逆に3%減少してしまう。それでなくても採算の苦しいFCオーナーに、緑モスへの改装費用約700万円がさらにのしかかった。

東京都内のオーナーは「緑モスにして売上高が前年比3割減った。“緑モス倒産”した店もある。いったい誰が責任を取るのか」と憤る。

櫻田社長は「豊かな空間でメニューもレストランに近いというコンセプトは、絶対に間違っていない。ただ、禁煙を一気に進めたことには問題があった。実際に売り上げを2~3割下げた店も複数ある。今年からタバコを吸えるちょっとしたスペースを設けるなど、ルールを見直しながら緑モスへの転換を進めることにした」と説明する。当初計画では08年度に全店を緑モスへ転換する計画だったが、現在918店にとどまる。

モスは注文を受けてからの手作りが特徴。必然的に時間がかかる。収益悪化で人を減らした店舗ではさらに客を待たせるようになってしまった。前出の神奈川県のオーナーは「売り上げが伸びずスタッフを減らした。店は汚れ、提供時間がかかり、クレームが出るなど悪循環に陥った」と赤裸々に明かす。もともと注文から提供まで7分ほどかかるが、店によっては15分かかることもしばしば。ドライブスルー店では、もはやファストフードの域を完全に逸脱した30分待ちさえ出現した。

メニュー施策でも緑モスは暗礁に乗り上げている。緑モス改装に伴って導入した580円から最高1000円までの高級ハンバーガー「匠味(たくみ)」。当初は話題を呼んだものの、調理に手間がかかるため店舗オペレーションが混乱、昼時のピーク時を除く限定販売とせざるをえず、収益への寄与は限定的だった。それどころか高級感を強調するあまり、逆に“モスは高い”というイメージを植え付けてしまう結果に。すると今度は低価格で高付加価値を狙った500円前後の洋風ご飯メニューを導入。だが、バーガーだけでもマクドナルドの9種類に比べ21種類と多いモス。店舗作業が追いつかず、導入店は当初計画の918店に対し、今年は約600店にとどまっている。こうして最大の強みだったメニューの訴求力も失っていった。

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