アーバンコーポ倒産--裏切りの巨額転換社債
今年最大となる負債総額2558億円で民事再生法の適用申請を行ったアーバンコーポレイション。倒産と同時に明らかにした転換社債の“裏契約”が、波紋を広げている。東京証券取引所も「適時開示が不適切だった」との認識を深めており、聞き取り調査を始めたもようだ。
焦点の転換社債は仏BNPパリバを引受先に7月11日に発行。調達額は300億円で、資金繰り難のアーバンにとって起死回生策だった。ところが、それと一体で結ばれたスワップ契約については情報開示がなされなかった。
「スワップ取引としては非常にトリッキーで、実質的には自社株連動の仕組み債に近い」。金融派生商品に詳しい外資系金融機関OBは、問題の契約をそう評する。アーバンは転換社債で調達した300億円について、パリバとスワップ契約を結び、想定元本として拠出した。つまり、手元には1円も残らなかった。
株価暴落で支払い途絶
スワップ契約は、アーバンの株価に連動して同社に支払いがなされるもの。ただ、株価が下限価格を下回ると支払いはなく、想定元本だけが減少する。アーバンの悲劇は、この間に株価が暴落したことだ。房園博行社長が個人的借金のため金融機関に担保として差し入れていたアーバン株が次々と市場で売却。特に7月4日には新生銀行が大量処分したこともあってストップ安、その後も下落を続けた。
結果、倒産時に想定元本が150億円まで目減りしたのに対し、パリバの支払いは90億円余り。実はパリバは5月中旬から市中で大量の借り株を調達し、アーバン株の裁定取引を仕掛けていた。これも株価下落の一因とみられる。
この間、アーバンは保有不動産の処分も進め、綱渡りの資金繰りをしのいでいた。4~6月に米メリルリンチに18物件、棚卸資産の簿価にして1000億円超を売却。さらに7月以降も12物件を売る予定だった。さらに株式公開買い付けの話も進んでいた。が、問題のスワップ契約が発覚して頓挫。そのことが倒産の引き金になったともされる。
会見で房園社長は「スワップ契約を開示する必要はないと考えた」と説明。パリバも「今回の契約は特に異例ではなく、アーバンによる非開示は私どもがコメントする立場にはない」としている。
(高橋篤史、許斐健太 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
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