10回転職した男が語る「障害者福祉」の深い闇 利用者への虐待、丸2日寝られないシフト…
知的障害者福祉施設の事務員、食品工場のパート、ホテルのフロント係、精神・身体的障害者福祉施設の支援員、老人ホームの相談員――。
2017年夏、関西在住の男性、Aさん(46歳)と喫茶店で面会した際に見せてもらった履歴書の職歴欄は、1ページに収まりきらないほどのボリュームだった。これまで転々としてきた職場の数を数えてみると、障害者福祉施設を中心に、11カ所にも及ぶ。
「転職10回」に見た社会福祉施設の過酷な現状
日頃は保育のブラック化など保育園の問題を取材している筆者だが、今回、Aさんの“転職人生”の話を伺ううちに、障害者福祉施設などの社会福祉業界全体に、保育園とも共通する職場環境の不備があることを改めて強く認識した。そこで、今回はAさんが転職の度に直面してきた福祉業界の過酷な現状を、リポートしてみたい。
Aさんは、とある有名大学への在学中、双極性障害(いわゆる躁うつ病)を発症した。新卒で4年間営業の仕事に就いたあとにも、半年ほど病気の治療施設に通った。
症状が落ち着いたAさんは、2004年から工場に就職したが、次第に自らがお世話になった障害者福祉施設での仕事に関心を持つようになる。そして、2005年からは自ら利用していた施設(I社とする)のパート事務職員となった。
この施設で働いている期間、Aさんは、障害者福祉のために精力的に動き始める。障害者に関する全国大会の運営ボランティア、NPO団体の設立など、次々と活動の幅を広げていった。振り返って考えると、Aさんが理不尽な思いをせずに働くことができたのは、ここにいた間だけだ。
2009年、生まれ故郷に帰ってきたAさんは、とある社会福祉法人の障害者福祉施設(K社とする)で、常勤の支援員として働き始める。が、働き始めてそう経たないうちに、同施設の異常な実態を目の当たりにすることに。
施設では、職員が利用者に対して大声で怒鳴る、命令する、たたく、といった虐待行為が横行していたのだ。仰天したAさんは、職場の同士たちとともに経営者に意見し、同施設を管轄する自治体にも訴えた。