WHOが、7273カップルを対象に行った不妊症の原因に関する調査では、男性原因のみ24%、男女に原因あり24%、女性原因のみ41%、原因不明11%で、約半数のケースに男性不妊が関わっていることが示されている。日本でも近年、不妊治療への関心が高まる中、男性不妊にも、ようやくスポットライトがあたり始めた。
荻窪病院泌尿器科部長の大橋正和医師は「最近は、男性不妊かどうか、チェックして欲しいという独身男性も受診に訪れるようになるなど、関心は高まってきていますが、さらに認識を高め、より早い診断と適切な治療を受けるようにする必要があります」と訴えている。
精子の問題を見つける精液所見
――不妊原因の半数を占める男性不妊とは、どういうものでしょう。
不妊症の原因は、女性側の問題と、男性側の問題が概ね半々とされています。男性側の因子としては、精液中に精子がない「無精子症」、精子が少ない「乏精子症」、動いている精子が少ない「精子無力症」のほか、勃起不全による性交障害、膣内でうまく射精ができない射精障害があります。
――精子の問題は、どのように調べるのでしょうか。
精子の状態を検査する精液所見は、不妊クリニックなどでも行われています。広口の容器に精液を出してもらい、精液量、精子濃度(1ml中の精子数)、精子運動率(運動している精子の割合)、精子正常形態率などを測定します。精液所見の基準値は、精液量が1.5ml以上、精子濃度が1ml中に1500万以上、精子運動率が40%以上となっています。この基準は、2010年に改定された値です。以前は、精液量2ml以上、精子濃度2000万/ml以上、精子運動率50%以上でしたから、1回の射出精液中の動いている精子の数(精液量×精子濃度×運動率)の基準は、2000万から900万まで緩和されたことになります。
実は、精液所見の値は、日によって大きく変動します。私の経験では、ある日は正常値だったのに、別の日は無精子症を示したという極端なケースもありました。1回の結果で早計に判断せず、複数回行って、その平均を見るべきでしょう。その上で、精液所見に問題があることがはっきりすれば、その原因について診断をつけてもらい、適切な治療を受ける必要があります。
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