地銀動乱--追い込まれる下位行、入り乱れる陣取り合戦


 九州地方で発火した地銀再編の火種は関西や東北地方へとついに飛び火した。

「以前から、親密地銀同士が連携することで双方がプラスになることを追求していこうと、東北4行で定期会合を持っていた。今回の経営統合も、北都銀行から機が熟したという話があったからだ」

5月末に東京で開かれた荘内銀行の決算説明会。町田睿頭取は、前々から追求していた再編への熱意がついに実ったことに満足そうな表情を浮かべた。

両行は荘内銀行が上場する以前、非上場地銀同士として資金調達し合う仲だった。また、荘内銀は2006年からみちのく、東北、北都の3行とシンジケートローンや売掛債権の流動化などで提携。4行の頭取同士で勉強会を重ねるなど、今回の経営統合に向けた地ならしを進めていた。さらに、荘内銀は以前にも旧殖産銀行(現・きらやか銀行)との合併を模索した経緯がある。町田頭取はいわば東北地方における「地銀再編の仕掛け人」といっていいだろう。

一方の北都銀は07年3月期決算で最終赤字こそ回避できたものの、単独最終利益は前期比96%減のわずか2200万円。自己資本比率は07年3月末の9.11%から08年3月末の5.58%に急落(単体ベース)した。有価証券評価損益が127億円の含み損になり、Tier�を大きく毀損。Tier�もTier�の半分以下という算入規制に抵触した。

追い込まれた北都銀は、荘内銀宛てに優先株80億円と新株予約権を発行。10年4月をメドに持ち株会社方式での経営統合に踏み出す。預金量は荘内8000億円に対し、北都は1兆円。小が大を飲む格好だが、実態はいわば、荘内銀による北都銀の「救済統合」だ。

統合により、両行合算の預金量は1.8兆円と、秋田、青森両銀行に次いで東北地区6位の規模に浮上する。しかし、北都銀への出資に伴い、荘内銀には自己資本の控除(ダブルギアリング)が発生する。08年3月末のリスクアセットを前提にすれば、荘内銀の単体自己資本比率は1.6%低下し、8.7%程度になる見込みだ。出資額と同額程度のTier�資本(劣後債)を今期中にも調達する方針で、荘内銀もそれ相応の財務負担を負うことになる。

選択は正しかったか 持ち株会社方式の成否

秋田、山形、宮城に広がる東北地方初の広域地域金融機関グループの誕生--。華々しく銘打たれた荘内-北都統合に対し、従来から再編に積極姿勢をみせていた岩手銀行は「相手のあることなので、お互いメリットのある金融再編なら積極的に取り組む姿勢に変化はない」(高橋真裕頭取)と従来通りのスタンスだ。

一方、東北地方の雄、七十七銀行は「全国ベースでみると、東北地方の地銀の数は多いが、面積も広い。仙台圏はますます発展しており、再編はほとんど考えていない」(鎌田宏頭取)と、あくまで独自路線を歩む方針。再編という火種が大手地銀に点火するまでにはあと一押し何かが足りない。

「お互い、強みを生かすことができれば、面白い再編になるのではないか」

金融法人部門を担当する大手銀行のある幹部が注目するのが、今年2月に経営統合を決めた池田銀行と泉州銀行だ。大阪から神戸にかけてを地盤とする池田銀に対し、泉州銀は大阪府南部が地盤。店舗網の重複が少なく、「関西の財界でも地元に強い地銀を望む声が上がっていた」(同幹部)という。

しかし、池田銀の08年3月期決算は、業務粗利益から赤字になるという異例の決算に沈んだ。泉州銀も単体業務純益は半減、当期純利益は前期比7割減の28億円にとどまった。統合を決めた記者会見で池田銀の服部盛隆頭取は「業績と経営統合とは別の話」と否定したが、300億円の優先株発行後でも池田銀の08年3月末のTier�比率は5.58%がやっと。財務悪化が両行の経営統合を後押しした面は否めない。

池田-泉州や荘内-北都は、いずれも持ち株会社方式の再編を選択した。ほくほくフィナンシャルグループ(FG)や山口FGなど、先行する経営統合組の大半が採用した再編形式だ。バーゼル�や金融商品取引法などに対応した間接部門の経費は増える一方だ。統合によってこうした経費の負担減を図ろうという狙いも込められている。

しかし、持ち株会社方式を見直す動きもある。01年に誕生した札幌北洋ホールディングスは統合後8年目にして、傘下銀行同士の合併に踏み切る。重複している取引先が多く、顧客からみると足の引っ張り合いと映ることもあるようだ。合併で40カ店を閉鎖するなど「さらにグループの力を高めるのが狙い」(同社)という。

ただ、合併行も合併効果をなかなか享受できないでいる。

「何とかこの1年間で落ち着きを取り戻すことができた」。こう振り返るのは、07年5月に旧殖産と山形しあわせ銀行が合併して誕生したきらやか銀行の粟野学頭取だ。システムの検証や事務処理手続きの調整から融資の稟議書の書き方まで、内部固めにエネルギーをとられることで、外の営業力に向かう力が相当程度そがれた。たとえば、預金平残は約1000億円、前期比8.8%と、減少幅、率は地銀中最も高かった。札幌北洋も約40億円の効果が発現するのは統合後5年経ってからだ。 

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