10年後、台所から包丁が消えるかもしれない 地方の衰退は、必ず東京にはね返ってくる

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地方では「24時間コンビニ」が難しくなっている店も。地方の疲弊は必ず東京にはね返ってくる(写真:xiangtao/PIXTA)

地方経済の衰退が止まりません。人口の減少、とりわけ若者人口の急減は、着実に地方経済の未来をむしばんでいます。日頃、セミナーやイベントで地方を回っている草食投資隊に、今の地方経済の現状は、どう映っているのでしょうか。そして、地方経済の衰退を食い止めるための方策は、あるのでしょうか。

島根・海士町は「最先端の教育」で子供の数が増加中

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渋澤:先日、島根県の隠岐諸島にある海士町(あまちょう)という所に行ってきました。どこにあるか、わからない方も多いと思うのですが、東京からだと米子空港から入るのがいちばん近いのかな。そして、境港から高速船に乗ると1時間ぐらい。普通のフェリーだと2時間以上かかります。

中野:高速船の料金が高いんですよね。

渋澤:確か、片道6000円です。

中野:それだと地元の人々の足にはなりませんよね。3年ほど前に佐渡に行ったのですが、あそこも新潟港から高速船に乗るわけですが、同じように料金が高かった。完全に観光向けです。

藤野:で、何をしに行ったのですか。

渋澤:内閣府の「ふるさとづくり実践活動チーム」の視察です。海士町は地域活性化のモデルになっている所で、かつてどんどん子供と現役世代である親の人口が減っていたのが、2008年からV字回復を果たしました。そのポイントが「教育」にあったのです。

かつては教育委員会任せだったのを、島のステークホルダーが主導して外部の知見を導入したんですね。具体的には、リクルートホールディングスやベネッセコーポレーションなどで教育事業関連ビジネスに携わり、退職した若手などが島に来ていて、公立の学習塾で、アクティブラーニングなどを導入したりしています。

あるいはICT(情報通信技術)を用いて遠隔教室なども行えるようにしました。こうした最先端の教育を子供たちに施すことによって、誰もが入りたくなる学校にしたのだそうです。いまや島外からも、「島留学生」として海士町の高校に入学しているようで、逆に子供の数が逆転して増えていったというわけです。

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