北欧自動車「サーブ」は中国資本で復活するか 中国企業傘下の成功例には高級車「ボルボ」

拡大
縮小

販売面でも後発メーカーならではの手法を取る。「ディーラー網を一から整備するのは現実的ではない。個人が所有する車ではなく、カーシェアや法人用リースなどに特化し、ディーラーを持たずに販売する」(営業部門でマネジャーを務めるニコラス・サンデル氏)。

中国資本でも、開発の中心はスウェーデン

生産拠点は中国・天津に位置するものの、開発は旧サーブからそのまま移籍した約800人ものエンジニアが、スウェーデンを中心に活動している。販売店を持たないため、開発部門に人的資源を集中させられるのだという。

CES Asiaに出展されたNEVSのブース。若者を中心に注目を集めた(記者撮影)

NEVSの開発部門でデザインを担当するアソク・アブラハム・ジョージ氏は、「中国資本だが開発陣のメンタリティはスカンディナビアンだ」と意気込む。

とはいえ、NMEホールディングスには自動車ビジネスのノウハウはない。中国人CEOのカイ・ヨハン・ジャン氏の斬新な発想が、旧サーブとうまく融合するのかは未知数だ。中国の自動車業界に詳しい現代文化研究所の呉保寧・上席主任研究員は、「EVブームに便乗した、投資目的の事業だ」と指摘する。

一方、サーブと同じスウェーデン発の自動車メーカー、ボルボ・カーは、中国企業傘下でいち早く成功を収めている。2010年、中国の自動車メーカー・浙江吉利控股集団(ジーリーホールディングス)は、ボルボを買収。以来、同社はジーリーの豊富な資金を元手に開発を加速させ、安全技術や電動化の先端企業となった。

ジーリーは冷蔵庫など家電の製造販売から出発した民営の自動車メーカー。当時、米フォード・モーター傘下で経営難に陥っていたボルボをジーリーの創業者である李書福(リー・シューフー)董事長が18億ドル(当時で約1600億円)で買収した。

次ページいかにしてボルボは復活したか
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT