自撮りアプリ「BeautyPlus」の知られざる実態 日本でも話題の自撮りアプリは中国発だった

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だが、利益面は厳しい状況にある。2014年以降、3年にわたって営業赤字が続いているのだ。美拍の立ち上げや2016年に追加したライブ配信機能などのソフト開発、また端末の新機種販売に伴う広告宣伝費がかさんでいるためだ。

ショールームに入ると、各事業の責任者などを模した7体のキャラクターがお出迎えする。右端の肉まんのキャラクターが呉CEOのキャラクター(記者撮影)

2016年はやや赤字幅は縮小したとはいえ、6.5億元(日本円で107億円程度)と依然として巨額の赤字を抱える。「2016年のIPO(新規株式公開)の前にユーザーを集めることに集中したため、マネタイズが遅れた」と呉氏は説明する。

もちろん、赤字脱出へ向けた対策へ乗り出している。最高財務責任者(CFO)を務める顔勁良(イェン・ジンリャン)氏は、「2017年は(アプリダウンロードの拡大で)広告収入が増えるほか、EC(インターネット通販)の強化で収益を上げる」と述べ、今年度中には黒字化にメドをつけると言い切る。

特にECへの期待は大きい。中国では天猫(テンマオ)や淘宝(タオバオ)など大手EC企業が存在する。ただ、「各社は商品の値引き合戦に集中している。ファッション性に特化すればより若い世代を取り込める。さらにユーザーに焦点を当てて、個々人に最適化したサービスを目指す」(顔CFO)。AI(人工知能)を通してユーザーに合ったファッションを提案し販売促進へつなげ、販売に弾みをつける構えだ。

日本市場の攻略は必須

本社のオフィスは間仕切りがなくオープンスペースになっている(記者撮影)

アプリによる広告収入では、日本を最優先市場と位置付け、海外展開を強化している。中国と日本は地理的に近く時差がないため、中国と同時にプロモーション活動を行いやすい。また日本の最新トレンドを分析して、ECの販促のためのデータを作りたいという思惑もある。

中国では資生堂と提携しキャンペーンなどを行っている。日本でも大手化粧品メーカーと提携し、アプリの認知度向上や利用促進を狙っている。

日本には「SNOW」やLINEが運営する「B612」など手強い競合が存在する。だが、海外事業を担当するグローバルマネージングディレクターのフランク・フゥ氏は、「たとえばSNOWは面白いスタンプなど、遊びに重きを置いている。Meituのアプリは写真の美しさに強みがある。機能をアピールすればすみ分けはできる」と自信を見せる。

ECビジネスの成長に加え、日本での自撮りアプリ事業の拡大は果たせるのか。陳腐化の早い業界にあって、競争は激化している。

若泉 もえな 東洋経済 記者

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わかいずみ もえな / Moena Wakaizumi

東京都出身。2017年に東洋経済新報社に入社。化粧品や日用品、小売り担当などを経て、現在は東洋経済オンライン編集部。大学在学中に台湾に留学、中華エンタメを見るのが趣味。kpopも好き。

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