プロ野球交流戦は球団経営の「お荷物」なのか 毎年のように「交流戦廃止論」が浮上するが…

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次に、この結果を基に、交流戦とリーグ戦の1試合当たり平均入場者数を比較した。交流戦の人数を分子、リーグ戦の人数を分母として、%表示で高い順に並べたものが下の表である。

どの球団が大きな「交流戦効果」を得ているのか

巨人が2015年シーズンにパフォーマンスを落としているのは、地方開催ゲームが1試合組み込まれていて、その入場者数が1万3000人足らずだったことが影響している。交流戦のホーム開催ゲーム数は9ゲームしかないので、天候なども含め、ちょっとした条件の違いでブレやすい。地方球場への遠征が入っていれば、球場のキャパが小さい分、平均を下げてしまうのだ。

東京ドーム開催ではコンスタントに4万人以上なので、リーグ戦との比較ではマイナスになってしまった。これがなければ、巨人は4年平均で110%近いパフォーマンスになっていたはずだ。

人気カードの開催曜日も大きく影響する。パ主催の場合、巨人、阪神、広島戦が、土日に当たっているのか、平日に当たっているのかでも違ってくる。2014年シーズンまでは、ホーム、ビジターそれぞれ1カード2試合ずつだったが、2015年シーズンからは、1カード3試合ずつで、ホーム開催は2年に1回になった。

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楽天が2015年シーズンだけ好パフォーマンスだったのは、対巨人3連戦が週末開催だったからだ。今シーズンは、巨人戦が平日開催となり、週末開催の広島戦を1試合平均で1700人弱下回った。

対戦相手チームの人気に頼らずに、集客増を実現しているケースもある。交流戦期間中にユニホームなどのグッズ配布をしたり、集客効果が上がるイベントを組み込むことで、観客を呼び寄せることは可能だ。グッズやイベントのコストはゲームスポンサーを確保することで吸収できる。

ソフトバンクは平日開催の中日戦と横浜戦で、リーグ戦の平均以上の観客を集めている日がある。

こうして見てみると、球団ごとに多少のバラツキはあるものの、全体としてそこそこの「交流戦効果」を上げている。特に高いパフォーマンスを上げている球団が交流戦廃止論を支持する合理的な理由があるとしたら、ぜひとも聞いてみたいと思う。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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