「米朝戦争」の危機はヤバイほど高まっている ICBM発射実験成功のインパクトは大きい

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その振る舞いとは、ミュラー氏がトランプ氏を司法妨害の捜査対象にしたというワシントンポスト紙の報道は、トランプ氏がミュラー氏を解任しようとする意図があるという別の報道の数時間後であり、ミュラー氏のトランプ氏へのリベンジではないか、というタイミングの疑問に対して、ミュラー氏が沈黙していることだ。

米国法では、沈黙は是認を意味する。仮にリベンジだったとすれば、まさに「オレに対して失礼ではないか」という上から目線の感情的な振る舞いという非難は免れない。しかも、特別検察官としての独立性の放棄にもつながる。信用失墜につながる振る舞いと言っていい。

偶発的な米朝軍事衝突のリスク

このミュラー特別検察官の信用失墜という政治的空気感は、トランプ大統領にとって、弾劾に追い込まれる可能性が限りなく小さくなり、退勢挽回のチャンスになる。

その援護射撃になるのは、ミュラー氏の捜査とは別に上院で始まっている調査だ。オバマ前政権下での、ジェームズ・コミー前連邦捜査局(FBI)長官に対する司法妨害疑惑に関する調査である。オバマ前政権のスキャンダルが明るみに出されれば、トランプ政権運営が不安定から安定へ回帰することになる。マティス国防長官が警戒していた、国民の信頼も得られるようになる。

現実に、北朝鮮リスクに対する一般国民の関心も高まっている。北朝鮮の核・ミサイル開発は、東アジアの遠い世界の出来事ではない。ICBMは当然のことながらアメリカ本土も標的にしている。さらに、北朝鮮で拘束され、意識不明となった米国の大学生が、解放された時点で手の施しようもない状態で死亡した。トランプ大統領も「残忍な北朝鮮政権を非難する」と表明した。

こうした事態急変で、いつ何時、突発的、偶発的な米朝軍事衝突が起こる可能性もなくはない。トランプ政権による軍事オプションの可能性もゼロではない。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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