原発大国フランスを覆う電力開発のジレンマ
パリから高速鉄道のTGVで3時間弱。サヴォワ県はスイスとイタリアの国境に程近いアルプスのふもとに位置する風光明媚な地域だ。「アルプスの少女ハイジ」の舞台としても知られる。
美しい湖に面した広さ85ヘクタールの「サヴォワ・テクノラック」は、太陽光発電関連ビジネスを手掛ける企業を中心に約200社が軒を連ねるテクノポリスだ。太陽光パネルに使われるシリコンなどの研究を行う国立太陽エネルギー研究所(INES)や大学なども立地、産官学挙げて再生可能エネルギーの研究開発に取り組んでいる。敷地内には人材斡旋の施設や託児所も備えられている。
同地域を訪れた6月下旬、東京ほどの湿気は感じなかったが、日差しはかなり強烈。街を歩くと、建物の屋上や街頭照明など、至るところで太陽光パネルが目についた。
再生可能エネルギー 欧州に広がる優遇策
「(親日家で知られる)シラク前大統領の次に、日本で有名になることができるかな」。そう冗談を飛ばすのは、現地の移動式自転車駐輪設備メーカーの社長。
筒の形をした駐輪ブースの天井には太陽光パネルが設置されており、メリーゴーランドのようにぐるぐる回転する。日本でも注目を集める電動アシスト自転車なら、駐輪しておくだけで充電可能だ。
サヴォワ・テクノラックのジャン・ジャック・デュシェーヌ取締役は「太陽光関連の技術で日本は進んでいると聞いているが、少しでも近づけるよう頑張る」と意気込む。
太陽光のほか、風力、水力、地熱など、再生可能エネルギーの開発が今、世界規模で進んでいる。地球温暖化問題に伴う二酸化炭素(CO2)削減を求める声の高まりに加え、最近は原油価格急騰も大きな“追い風”になっている。
先行しているのはやはり欧州だ。EUは2020年までに、消費量全体に占める再生可能エネルギーの割合を05年の8・5%から20%へ引き上げるとの公約を掲げている。フランスも他のEU諸国に負けじとばかり、同エネルギー導入に傾注。20年までにEU全体と同じ20%(06年で6・6%)以上の達成を目指す。
積極化策の一つが「フィード・イン・タリフ」と呼ばれる制度の採用だ。電力会社などに対し、再生可能エネルギーを、生産者から市場価格よりも高い価格で一定期間買い取ることを義務づけたものだ。発電コストが割高という不利な条件を抱えた関連産業の育成策で、同制度は欧州各国に広がっている。
フランスも02年から導入に踏み切った。購入価格は陸上風力が1キロワット時当たり8・2ユーロセントで期間は15年。太陽光は同30~55ユーロセントで期間は20年となっている(いずれも06年時点、下表参照)。
政府も太陽光発電システムを設置した設備に対し、税額控除などの施策を通じて利用促進を支援。再生可能エネルギー開発は急拡大中だ。