なぜ「定年後」の男性は悲惨なことになるのか イキイキしている人は2割未満?

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――何歳ぐらいから定年後に向けて準備をするべきでしょうか。

サラリーマンは40代に入った頃から、仕事中心の働き方に疑問を覚え、「このままでいいのか」と思う人が増え始めます。若手の頃は強かった「収入を増やしたい」「役職を上げたい」などの成長意欲がひと段落し、気持ちが心の豊かさの追求に向かうのです。そのときからすでに定年後は始まっていると言えるでしょう。

私が執筆を始めたのは50歳からで、それでも十分間に合いましたが、60歳から始めたらしんどいかもしれません。40代後半から検討を始めて、50歳を過ぎた頃から動き始めればベストだと思います。

30代の会社員がすべきこと

――30代など若手の頃は、どのように定年に向き合えば良いでしょう。

30代は定年など意識せず、目の前の仕事に注力することです。それが基礎力となり、中高年になったときに、自分の選択肢やキャリアの幅を広げてくれるのです。与えられた仕事を右から左へ流すのではなく、自律した姿勢を持って仕事に取り組めば、なおいいですね。

会社は社会の要請と向き合っている存在です。そこでの経験は、会社以外の場ではなかなか得られません。若い頃はがむしゃらに働くことで自分を育て、行き詰まったら違うことを少しずつ始めるなど、年齢を経るごとに働き方を変えていくのがベストだと思います。

――在職中、それもできるだけ早いうちから趣味ややりがいを持つことが、定年後の豊かな暮らしになるのですね。

そうですね。その際も、主体的な意思が大事です。「みんながしているから自分もしよう」ではなく、自分が本当にしたいことを探す気持ちがあれば、きっと見つかるでしょう。

あとは逆説的ですが、病気やリストラに遭った、役職から降ろされたなど、不幸や挫折を経験した人はうまく次のステップに転換できている人が少なくありません。なぜ自分だけがこんな目に、という経験は、自分を見つめ直す孤独な作業を必要とします。また、所属する会社を客観的に眺めることにつながる。これらが主体的意思を育むのです。すぐには転換できなくても、時を経てみると、結果的にプラスになっている人がたくさんいますよ。

肥沼 和之 フリーライター・ジャーナリスト

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こえぬま かずゆき / Kazuyuki Koenuma

1980年東京都生まれ。ルポルタージュや報道系の記事を主に手掛ける。著書に『究極の愛について語るときに僕たちの語ること』(青月社)、『フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。』(実務教育出版)。東京・新宿ゴールデン街の文壇バー「月に吠える」のオーナーでもある。ライフワークは愛の研究。

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