鉄道自殺は、「AIの目」で防ぐことができるか 自殺者特有の心理学的行動を駅カメラが監視

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AIで鉄道自殺の兆候を察知するシステムを開発したアースアイズの山内三郎代表(筆者撮影)

防犯対策で培ったテクノロジーがどのように鉄道自殺を防ぐのか。山内代表に話を聞いた。

「テレビ番組などで『あなたはいまうそをついていますね』と言い当てるメンタリストがいますよね。すべての人には、うそをつくときに現れる行動がある。メンタリストはそういう行動を見ている。自殺をする人にも同じような行動が見られる可能性がある」と山内さんはいう。

「たとえば、思いつめているときは、一般的にはウロウロしませんね。座り込んで元気がない感じだったり、覚悟を決めてしまった人は、助走するためにホーム端から中央へ寄って行ったりするかもしれない」(山内さん)。同社の開発したシステムは、こういった行動を把握できるという。

カメラでホーム上の行動を検知

山内さんは「うちのカメラは、そのような心理学的な行動をIT化する技術を持っていると思ってください。そういう行動があれば検知し(駅員に)連絡することができます」と説明する。混雑するホームで人が重なっているように見えても、頭が出る程度の差があれば個人を識別可能で、5〜6人が座ったベンチを横から写した場合でも問題ないという。

カメラは、写った全員の移動経路や経過時間なども記録しており、このうちの1人がベンチでうなだれ、まったく動かなくなってしまっても、人混みの中から検出できるという。このような行動パターンと、移動や時間に関する情報とを合わせることで、「自殺のリスクあり」とAIが判断する。

もちろん、駅係員もカメラと同じように人物を視野に捉えることはできる。しかし、全員の移動経路や経過時間を同時に正確に認識することは不可能だ。自殺対策用のAI搭載カメラの導入が進めば、鉄道会社だけでなく、鉄道利用者にも人身事故による運休減少などの効果が期待できる。

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