カフェ経営を成功させる人は何が違うのか 会社員から人気プロデューサーに転身

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「渋谷で物件を探しているとき、このビルは商業用には5階が空いていました。だけど、屋上から景色を見下ろすのが好きな私は、上まで上り、そのとき8階の窓を見て『まるで天空から見る眺めだ』とひらめきました」。だが8階は事務所になっており、貸していなかった。

ここからが五味さんの真骨頂。すぐに企画書を持参、ビルのオーナーを口説き落とした。

企画書にあるコンセプトはこうだ。「無国籍で天空に浮かんだ魔法の国の家。子供部屋、ベッドルーム、書斎、ベランダ、カウンターダイニングという5つの空間をイメージした店内」。つねに想像力を膨らませ、「自分が行きたいカフェを作る」という熱意とこだわりが、彼女を突き動かしてきた。

成功する3つの秘訣

「あかりまど」と、五味さん夫妻

五味さんはカフェを作るうえで、成功する3つの秘訣を、①場所、②営業計画(コンセプト)、③オープン後の微調整だと端的に語る。

1つ目の「場所」は、当然ながら人通りが多いこと。

「都心で100人歩く道で、1人入れば採算の合う“勝ちやすい店”を作ることは可能だと思います。特に私のようにエッジの効いた店をやりたい人には重要です」

五味さんの店舗展開は、渋谷、新宿、銀座、恵比寿、吉祥寺と人気の立地をわかりやすく選んでいる。だが、賃貸料を抑えるためには、好立地でも悪条件の物件をあえて狙う。

「建物が古い。エレベーターがなく階段だけ。風俗店がビルに入っている。給水、ガス、電気に不備があり、借り手がいない。それを逆手に取ってきました」

東京・銀座3丁目にある「APPARTEMENT 301 (アパルトマンサンマルイチ)」が、まさにそれ。フランスの田舎町にあるアパートをイメージした店は、半世紀以上も前に竣工した5階建てビルにある。

エレベーターはなく、3階の店へは階段しかない。古いビルへ足を踏み入れると、アンティーク家具が並び、隠れ家的なまったり感が漂う。ユーザーからは「今まで銀座にはなかったお店」と、連日女性客を中心ににぎわっている。雰囲気だけではなく、ソースが選べるフレンチトースト、エスニックとイタリアンを取り入れたダイニングカフェとして味にも力を入れるなど、女子人気の高さを誇り、30坪で月商700万円は五味さんの経営する全店舗を牽引する売上高だ。

2つ目は「営業計画(コンセプト)」。

五味さんは「プロデュースを依頼されても、丁重にお断りすることがあります。それは、おカネはいくらでも出すから従業員を雇いオーナーになりたい。自らは店に立たず、苦労せず、ただ儲かればいい。そういう方は絶対長続きしないんです」。

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