大王と北越紀州、2割出資巡る「仁義なき戦い」 株主総会で再びバトルも決着は持ち越しへ

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両者の争いは、ともすると北越紀州が大王に押されているように見えがち。だが、間違いなく圧倒的に優位なのは2割強の株を持ち筆頭株主となっている北越紀州だ。言うことをきかせたい北越紀州と言うなりにならない大王というのが争いの姿だが、どんなに対立して仲が悪くなろうが、北越紀州側は大王の純利益の2割を取り込める。

大王の今2018年3月期の純利益予想は140億円で前期比15.3%増となる。北越紀州の純利益を約28億円押し上げてくれる。そもそも2012年に創業家から株式を取得した当時の株価は400~500円程度。足元では1400円前後だから、投資として考えれば十分すぎるほどだ。大王株の扱いについて問うと、北越紀州の幹部は異口同音に返す。「大王株を持つメリットはある。何のデメリットがあるのか」。

筆頭株主であり続ける北越紀州、膠着状態は続く

岸本セキ夫(セキの字は「折」の下に「日」)北越紀州社長は5月下旬に開かれた決算説明会で「大王を持分会社にしていることが製紙業界に大きく貢献している。現在の(北越紀州と大王の)関係は見かけ以上に大王のガバナンス向上に役立っている」と大王株保有は2社間だけでなく、業界全体に意義あると述べ、「(CBの損害賠償請求)裁判が両社の関係を決めていく。法的な判断が出るまで現状を変えるつもりはない」とした。

訴訟を提起している北越紀州側からすれば株主総会で佐光社長を始め訴えの対象となっている取締役の再任に反対するのは、当然のこと。また係争中に筆頭株主のポジションを変えることも、常識的にはあり得ない。判決まで動かないことを岸本社長は明言した。つまり、今のところ北越紀州が大きく動くことはない。

仮に北越紀州が、思い通りにならない大王に見切りを付けて、株売却を決断したらどうか。大王にとっては望むところだが、大問題はその売却先。かつて佐光社長は「(北越紀州が大王株を売るといえば)それはもちろん、買います」と買い受けに強い意欲を見せていたといわれる。

大王は譲り受けがかなわないなら、小出しに市場で売ってほしいところだろう。最悪なのは2割まとめて「大王の経営に関与したい」と考える第三者に売られてしまうことのはず。大王にとっては経営への関与を嫌うあまり、北越紀州を刺激しすぎることは得策ではなく、今後大きく動くことはないだろう。

株主総会が終われば、再び膠着状態に戻る。戦いは長くなる。  

鶴見 昌憲 東洋経済 記者

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つるみ まさのり / Masanori Tsurumi

紙パルプ、印刷会社等を担当

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