農業の「外国人就労特区」法案に潜む重大問題 日本の移民政策の転換点になる可能性がある
こう見てみると、今回の農業人材の受入れは、政策の大転換を行うものであり、本来的には国論を二分するようなテーマである。また、"強い農業"の実現のためには、長期的観点からの検討も必要になるはずだが、それもなされていない。
あるいは、外国人就農者の受入れを恒久的な措置とするのではなく、技術革新による生産性向上を具体的な数値目標をもって進める。そして、外国人就農者の受入れはそれが実現するまでの過渡期における一時的な措置と位置づける――。そのような方向性を考えてみることも、十分に合理性があるはずだ。
参議院では十分な議論がなされるべきだ
だが、多くの論点に対して、多角的な考察がなされるべき国家戦略特区法の改正について、衆議院では議論が深まらなかった。その理由はというと、国会で審議の対象となる「法律」には、わずか1条の中の4項の条文しかなく、受入れの仕組みの重要部分のほとんどが、これから定められるという「指針」や「政令」に委ねられているからだ。
法案に反対した民進党議員や共産党議員が具体的な受入れスキームについて質問しても、政府は「これから検討する」といった答弁を連発し、議論を深められなかった。また、議員が書面で質問する「質問主意書」に対する政府の答弁も同様に「政令で適切に定めてまいりたい」「指針において適切に定めてまいりたい」といったものが多く、具体性に欠けた。
だからこそ、参議院では慎重かつ緻密な議論が望まれる。日本農業の未来にとどまらず、日本の外国人政策や移民問題というより大きなテーマにつながる法案だからだ。
政府は、どのような外国人について、どのような機関に受入れを認めるのか、その要件をはっきりさせる必要があるだろう。そして、受け入れる外国人や受入機関に対して、どのような規制や取り締まりを行うのか、具体的な計画や枠組みを明確に提示して、正面から徹底的に審議することが求められている。
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