新設・増床が続々 ブームの枠を超えたアウトレットモールの隆盛

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 百貨店を中心にキャリア女性向けのブランド「セオリー」などを展開するリンク・セオリー・ホールディングスは、全国のモールにアウトレットを9店出店しているが、「正規店だけでなく、アウトレットも重要な流通チャネルと認識している」(大西秀亜グループCFO)と言う。同社の国内事業の正価販売率はおよそ65%。残り35%は正規店でのセールやファミリーセールのほか、翌年まで保留してアウトレットで消化することを前提としている。廃棄処分はほとんどない。

全国のショッピングセンターなどに400店以上の女性衣料店を展開するポイントも、昨年度後半から、アウトレットを戦略的に活用するようになった。

これまでは、各ブランドの売り上げの伸びに対して、アウトレット店の数も販売力も不足していたため、季越商品の多くはやむをえず費用計上して廃棄していた。一方アウトレット店では、品薄時の店頭を補うために、アウトレット専用の商品が低原価で作られ、ほとんど利益の取れない価格で売られていた。そこで、アウトレット店の出店を増やすとともに、アウトレットへのデリバリーも計画的に行い、アウトレット店自体の粗利率向上と、廃棄処分の最小化を図る取り組みを開始したのだ。

ユナイテッドアローズでは、アウトレット店の今後の戦略をあらためて考案している最中だという。2007年3月期は秋冬の正価販売が不振だったため、全体の粗利率は計画に満たなかった。だが、アウトレット店に関しては、正規店で動きの悪い商品を迅速に移動させたことで、粗利率が計画よりも2・1C上回るという実績を残すことができた。

別のアパレルメーカーの経営企画担当が打ち明ける。

「ファッションサイクルが短縮化し、店頭に次々とトレンド衣料が並ぶ今、アウトレットは店頭の鮮度向上のためにも、廃棄処分による粗利率低下を最小限に抑えるためにも、なくてはならないもの」。このメーカーでは、商品を店頭に並べて動きが悪ければ、1週間後でも早めに見切ってアウトレットに回している。今やその巧拙が、全体の粗利率をも左右するのだという。

テナント側のこうした取り組みが、アウトレット全体のレベルを引き上げ、来店客の満足度を高めていることは間違いないようだ。

“買い物”しない消費者 レジャーの場として設定

チェルシージャパンが運営する「御殿場プレミアム・アウトレット」は、開業から8年が経った今も、来場者の約20%は新規客だという。03年、08年と2回の増床を実施するごとに、新しいテナントを出店し、話題を提供してきた。アウトレット側がそうした工夫を凝らしてきたのも事実だが、吉村俊秀社長は、「アウトレットを利用するという買い物スタイルが、最近になってようやく消費者に広く浸透してきたようだ」と見ている。

同社の施設は、米国の街の様子を再現するなど、非日常の雰囲気を演出している。「単なる買い物ではない。非日常、つまり楽しい雰囲気の中で買い物体験ができる」(吉村社長)という設定が、客が訪れる動機になっているという。

新たに開業した那須ガーデンアウトレットでは、「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」を運営する西武商事の手によって、地元産品を集めたロコマーケットや、動物と触れ合える広場やせせらぎを併設して、「リゾートショッピング」を楽しめるような環境を整えている。

「今や、何か大きな動機がないと消費者は買い物をしない。その意味で、レジャーとしてこの施設を訪れることが、買い物をする大きなきっかけになる」と荒尾剛志ゼネラルマネージャー。アウトレットモールが一時的なブームに終わらず、百貨店やショッピングセンターの不振を尻目に客を集め続ける理由は、こんなところにあるのかもしれない。

(堀越千代 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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