「地元には何もない」と言われる街に欠けた物

ドイツでは郷土博物館がこうも愛されている

ドイツでは、地域住民の文化的素養を身に付ける場として郷土ミュージアムが支持されている。写真はシュパイアー市(人口5万人)の市営ミュージアムに並ぶ人々。家族連れの姿が多く見える(筆者撮影)

先日、「学芸員はがん」という山本幸三地方創生相の失言が話題になった。「地方創生とは稼ぐこと」と題した観光やインバウンドによる地方創生に関する講演後に、学芸員が文化財の保存や修復に重点を置くあまり、ミュージアム(博物館・美術館)の観光的価値を高めようとしないから、一掃しなくてはダメだ、という趣旨の発言をしたのである。

すでに多くの人が指摘しているとおり、違和感のある発言である。地方創生におけるミュージアムの役割とは、観光客を呼び込み、稼ぐためだけにあるのだろうか。今回は、地域におけるミュージアムの役割を考えていきたい。

ドイツ人が余暇にミュージアムへ行く3つの理由

筆者が住むドイツには、全国に6300館を超える数のミュージアムがある。ドイツ博物館(ミュンヘン)やベルガモン博物館(ベルリン)など、日本向けの観光ガイドにも掲載されるような有名ミュージアムは、外国から大勢の客を呼び込み、まさしく「観光資源」だ。

その一方で、外国人に好まれるような華やかさはなくても、どっしり地域に根づいたミュージアムもある。こうしたところで大掛かりな展覧会が開かれると、休日には住民が家族連れでやってくる。親子3世代で足を運ぶことも珍しくない。

もっとも、余暇をミュージアムで過ごす市民が多くいる背景には、ドイツ特有の事情がある。まず、週末の過ごし方としてミュージアムへ行くことが選ばれやすい。ドイツでは、法律によって日曜日の小売店の営業が禁止されている。つまり、休日にショッピングを楽しむという選択肢がないのだ。

次に、文化的エリートの存在がある。19世紀には、「教養市民層」と呼ばれるドイツ独自のエリートがいた。彼らは古典を学び、教養として文化をたしなんだ。今でこそ「教養市民」という言葉は死語に近いが、それでも社会統計の際の分類に使われることはあるし、この系譜を引いた層は今もいる。というのも、ドイツ社会は階層移動が少なく、文化資源はエリート層の家族内で蓄積され、生活するうえで文化的素養が重要だという意識は、世代を超えて継承されていくからだ。3世代でミュージアムを訪ねるような家族の祖父母は、おそらく常日頃から高級紙などに載っている展覧会の情報をチェックしているのだろう。

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