佳恵は、ここ3カ月、お見合いを休んでいた。友達に誘われて参加した合コンで出会った拓也(41)と付き合っていたからだ。その佳恵が、「またお見合いを再開したい」と連絡を入れてきた。
私は拓也に会ったことがないのだが、佳恵から見せられたツーショットの写真に写る拓也は、佐々木蔵之介似のキリリとしたハンサムだ。身長も、162センチの佳恵より頭ひとつ大きい。外資系の大手企業に勤めているというのだが、勤め先を偽っていなければ、年収は軽く1000万円を超えているはずだ。
つまり、婚活中のアラフォー女性にとって、 “結婚するには申し分のない相手”だった。
「“結婚を前提にお付き合いしたい”と言われたので、しばらくは彼と真剣に向き合ってみようと思います」
“お見合いをしばらく休みたい”と、連絡を入れてきたときの佳恵の声は弾んでいた。それなのに、この3カ月のうちに何があったのだろうか。
年収1000万円でも「人にはおカネを使えない」
佳恵が、久しぶりに事務所にやってきた。
「彼との結婚は考えられなくなりました。またお見合いを再開しようと思います」
開口一番こう言った。考えられなくなった1番の理由が、おカネに対する考え方の違いだったという。
「自分にはおカネを使えるけど、人にはおカネを使えない。ケチなんです。自分が払った金額と同等の額を私も払って当然だと思っているんですね、彼は」
「すべてが割り勘ってこと?」
「はい。ただ会計を割るんじゃなくて、ここは彼が払ったら、次は私が払うみたいなパターンでした」
栃木出身の佳恵は横浜に一人暮らしをしながら、横浜の会社に勤めていた。拓也は埼玉の実家に両親と住み、都内まで通勤していた。デートは横浜か都内でするのだが、週末は食事をしたらその後はホテルに泊まっていたという。
「彼は私の家に来て泊まりたかったみたいだけれど、正式に結婚することが決まるまでは家に呼ぶのは嫌だったので、外で会うようにしていました。家を知られてないのが幸いでした」
結婚が決まるまで一人暮らしの部屋に男性を入れないのは、賢い選択だ。女性の家に寝泊まりできる関係になると、そこから“結婚”を言い出さずに、ズルズルと恋愛関係だけを引っ張る男性もいる。女性は、“いつかは結婚できるのではないか”と期待をし、その関係を2年も3年も続けてアラフォーになり、恋愛が終わったときに後悔をすることがある。
佳恵は、続けた。
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