新幹線vs.航空「30年戦争」の勝者はどちらか 国鉄民営化でサービス競争が激化した

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新幹線開業後も、災害などによって新幹線が数日以上運転できない際は、新幹線開業によって運休した航空路線および既存路線の臨時便が運航される場合が多い。11年の東日本大震災時においては、ANA、JALの両社が羽田―仙台・福島・山形・花巻などへの臨時便が運航された。

中越地震の際には羽田―新潟、熊本地震の際には福岡―鹿児島などの臨時便が運航された。新幹線では1~2時間で行ける場所であっても、新幹線や高速道路が遮断されると陸上ルートで最大半日近く時間を要してしまう可能性もある。そんな場合も、到着地の空港が閉鎖されていなければ飛行機で移動することが可能になり、飛行機の存在感が増すことになる。

リニア開業で羽田―伊丹はどうなる?

将来的に航空路線に大きく影響を与える可能性があるのがリニア中央新幹線(以下リニア)。2027年に開業予定の品川―名古屋間は40分、 大阪まで全線開業すると品川―大阪間は67分で結ばれるようになる。現在、ANA、JALともに1時間に1本を運航する羽田―伊丹線は、2027年のリニア名古屋開業段階で減便される可能性も十分に考えられる。

ただ、前述した乗り継ぎ需要に加えて、名古屋でのリニア新幹線(地下ホーム)から東海道新幹線(地上ホーム)への乗り換えには15分かかるという想定で、荷物を持って移動しなければならない。時間が短縮されるとはいうものの、大阪まで乗り換えなしに行ける現状の東海道新幹線「のぞみ」と比べて手間もかかる点などを考慮して、リニア開業後も航空路線には一定の需要があると考えられる。

それでもさすがに2045年予定の新大阪駅開業の暁には、品川―新大阪間の所要時間が67分になることで、リニアに旅客需要は完全にシフトするだろう。その際は、羽田―伊丹線は、羽田での国際線乗り継ぎ目的の一部便のみになる可能性が高い。今後もリニアを中心に新幹線が開業するたびに、航空路線には減便・機材の小型化、さらには路線撤退といった影響を及ぼすことになるだろう。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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