新幹線vs.航空「30年戦争」の勝者はどちらか 国鉄民営化でサービス競争が激化した

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この2往復化が定着した要因はいくつかある。空港サポーター組織「おいしい山形空港サポーターズクラブ」を創設して会員専用の無料ラウンジを設置。ビジネス客を取り込んだほか、最寄りの山形新幹線さくらんぼ東根駅までのワンコイン(500円)タクシーや山形駅を結ぶシャトルバスを充実させた。羽田空港での乗り継ぎを活用した外国人誘致、さらには季節に応じて山形県内の特産品を到着客にプレゼントするキャンペーンも実施するなど、自治体と航空会社の連携が数字に結び付いている。

2便化して羽田発、山形発ともに朝便と夜便が設定されたことで、ビジネス客の姿が多く見られるようになったことも、利用者数を押し上げることになった。

2015年3月に北陸新幹線、2016年3月には北海道新幹線が開業したが、ともに競合する航空路線の廃止には至らなかった。北陸新幹線の長野―金沢間開業で東京から富山駅まで最速2時間8分、金沢駅まで最速2時間28分でレールが結ぶことになったが、航空は減便や機材の小型化で約4割の乗客減となったものの、17年2月現在でも羽田―小松線はANAが1日4往復・JALが6往復の合計10往復、羽田―富山線はANAが4往復を飛ばしている。

運転本数や割引運賃の違いで航空機も存続

航空路線存続の理由はいくつかある。まずは北陸新幹線の運転本数。1時間に6~7本はある東海道新幹線「のぞみ」と違って、おおむね1時間に2本程度の運転間隔となっている。また、大宮駅発車後に長野駅と富山駅のみ停車する速達タイプの全車指定席「かがやき」は、利用者の多い朝と夕方以降の時間帯が中心。日中の時間帯は長野駅から金沢駅間のほとんどの新幹線停車駅に止まる「はくたか」が主体で、東京駅から金沢駅までの所要時間は約3時間に伸びる。そうなると、羽田空港から小松空港へANAとJAL便合わせて10往復を運航する飛行機と所要時間では大きく変わらない。

また、北陸新幹線には大きな割引運賃がないことも影響している。航空は1カ月以上前の購入で片道1万円以下で利用できるANAの「旅割」やJALの「先得割引」などの事前購入型割引運賃や、往復航空券とホテルがセットになったパッケージの活用で、新幹線よりも安く利用できる。

JR東日本のインターネット予約サービス「えきねっと」でも、東北新幹線や上越新幹線などでは14日前までの購入(13日前の午前1時40分まで)で特定列車が最大35%割引になる割引運賃「お先にトクだ値」を設定しているが、北陸新幹線の長野以遠においては、前日(乗車当日の午前1時40分)まで購入可能な「えきねっとトクだ値」の10%割引のみ(東京―金沢間は1万2700円)。

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